設計は建築家・坂茂、〈豊田市博物館〉が開館。圧巻の集合展示「とよたモノ語り」も見どころ。
コロカルニュース
■豊田市の「今まで」と「これから」を伝える施設 55年間にわたって愛され、惜しまれつつも閉館した〈豊田市郷土資料館〉。その歴史と展示内容を受け継ぎつつ、豊田市の未来についても考える総合博物館〈豊田市博物館〉が、2024年4月26日にオープンしました。 【写真で見る】高さ約8mの巨大な棚に、豊田市にまつわるさまざまなモノを展示した「とよたモノ語り」。 場所は、豊田市の中心市街地。最寄り駅である豊田市駅から歩いていける距離で、すぐ隣には〈豊田市美術館〉も並んでいます。 館内には常設展示のほか、屋外展示や庭園もあり、企画展を開催することも。愛知県豊田市の歴史や人々の暮らし、自然などに、さまざまな角度からアプローチする施設です。 ■設計は世界的な建築家 〈豊田市博物館〉に足を踏み入れて気づくのが、明るく開放的な雰囲気が漂っていること。豊田市産の木材をふんだんに使用し、伸びやかで豊かな自然も感じられる空間に仕上げています。 建物の設計を担当したのは、日本を代表する建築家・坂茂氏。そして、庭園を担当したのはランドスケープ設計者であり、隣接する〈豊田市美術館〉の庭園も手がけたピーター・ウォーカー氏です。 設計者は公募型プロポーザルでの選定でしたが、坂氏が提案したプランが隣接する〈豊田市美術館〉との景観の連続性にすぐれていたことや、再生可能な建材の利用などを盛り込んでいたことが決め手となり、坂氏に依頼する運びとなったといいます。 再生可能な建材は、館内の随所に見られます。たとえば、館内の壁の一部で使用されているパイプ。これは再生紙でできた「紙管」で、軽量かつ頑丈であることから、坂氏が災害用シェルターの設計でたびたび活用しているものです。 建物には蓄電池つきの太陽光発電も設置し、災害が起きてから72時間は電力を確保できる仕組みを整えています。その結果、建物で消費する年間のエネルギー消費量を削減できる建築物の認証である「ZEB Ready」も取得。これは、新築の博物館としては初めてのことです。 ■豊田市の歴史と文化が詰まった圧巻の展示 館内にも、見どころが盛りだくさん。特に目を引くのは、集合展示「とよたモノ語り」でしょう。高さ約8メートルの巨大な棚の中に、豊田市にまつわるさまざまなモノを展示。市内の家で使われていた日用品や農具、生息している生き物の剥製から、土器や銅鐸、まちなかで使われていた看板など、見れば見るほど発見があります。 また、「とよた記憶トラベル」も要チェック。こちらは豊田市民や、豊田市にゆかりのある人々から寄せられた、豊田市の暮らしや文化にまつわる声を紹介するコーナーです。地元の祭や学校生活など、さまざまな観点で声を集めています。ただ展示を見るだけではなく、「展示物をつくる工程に参加する」という体験ができる博物館はなかなか珍しいのではないでしょうか。 豊田市は愛知県内で最も広大な面積を誇り、3万年以上も前から人が住んでいたといわれている地域。生息している生き物も、育まれた文化も、とても多様です。そうした歴史の息吹を感じられるよう、たくさんのモノや人々の記憶などを収集し、「とよたモノ語り」や「とよた記憶トラベル」として集中的に並べたといいます。 来場者からは、「展示の仕方がおもしろく、見ごたえがある」「ガラスの大きな展示ケースが印象的で、ぐるぐるまわりながら見ていたら時間を忘れるほど夢中になっていた」などの感想が寄せられています。 ただ美しい建築を楽しむだけではなく、過去、現在、そして未来について伝えながら、日々の暮らしや環境について考えるきっかけも与えてくれるーー〈豊田市博物館〉は、そんな博物館だといえるでしょう。 information 豊田市博物館 住所:愛知県豊田市小坂本町5-80 TEL:0565-85-0900 営業時間:10:00~17:30(入場は17:00まで) 定休日:月曜(祝日の場合は開館)、年末年始※展示替え期間で休館の場合あり 常設展料金:一般300円、高大生200円、中学生以下無料※豊田市内在住の方、市内在学の高校生など条件を満たす方は無料 Web:豊田市博物館 writer profile Hiroko Shimokawa シモカワヒロコ しもかわ・ひろこ●岐阜県岐阜市出身。タウン誌の編集者を経て、現在は名古屋を拠点に活動するフリーランスライター・編集者。幼少期から「ローカル」を感じる店や人が好きで、大学ではまちづくり・都市政策を研究していた。 【コロカルニュース】とは? 全国各地の時事ネタから面白情報まで。コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。