【阪神牝馬S回顧】末脚の破壊力増すマスクトディーヴァ 強気な立ち回りでマイル女王へ好発進
淑女は騒がない
桜花賞はキャリアが浅く、まだ距離適性をつかめていない上に最大目標のクラシックとあってスピード型の馬が挑戦することでペースが厳しくなることがある。極限に仕上げられた状態は暴走するリスクと紙一重。多頭数でエキサイトし、上げたくなくてもペースアップする。魔の桜花賞ペースはコース改修によって消えていったが、魔物はまだ阪神芝外回りに棲みつく。一方、これが古馬になるとまるで状況が変わる。同週の阪神牝馬Sと桜花賞の関係は正反対といっていい。 【桜花賞2024 推奨馬】前走タイムは三冠牝馬を上回る、連対率100%データにも該当! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 古馬はある程度、距離適性を陣営がつかんでおり、そもそも阪神牝馬Sは前哨戦であって出なくてはいけないレースでもない。今年も11頭立て。マイル戦になった2016年以降、フルゲートになったことはない。頭数が少なく、経験豊富な淑女たちの集いとあってはみんな前半は折り合って静かに進む。騒がしい時代は月日とともに彼方へ過ぎ去っていく。逆を言えば、騒げるときには騒いでおこう。もちろん、いつ騒いだっていい。 今年の阪神牝馬Sは前半800m47.4だった。そもそもこのレースの前半800mが47秒未満だったのは16年以降、2回にとどまる。18年ミスパンテールが逃げ切った年など、前後半800m49.1-45.7と、いくらなんでもお淑やかすぎた。今年も定番のスローペースになり、道中の通過順も直線までほぼ変わらず。みんな最後の直線に賭けた。もちろん、それを裏づける瞬発力を繰り出せるなら構わないが、はたして全馬そのタイプだったのか。もちろん、それを嫌い先行策に出た馬もいた。だが、結果的にはスローの瞬発力勝負になった。まるで金縛りに遭ったかのようだった。やはり阪神外回りには魔物がいるか。
GⅠでも強気に出られるか
後半800mは12.1-11.3-10.8-11.4で45.6。前後半の差1秒8と落差の大きな競馬になった。直線に向き、坂下残り200m標識までは10.8と速く、これを楽々抜け出したのがマスクトディーヴァだ。昨年のローズS(阪神芝外回り1800m)では1:43.0とレコードを叩き出した。その後半600mは11.2-11.0-11.8だから、確実に末脚の破壊力が増した。モレイラ騎手が手綱を落とす場面があっても完勝。いよいよGⅠに手をかけたといっていい。 昨年の秋華賞は内回りと2000mという距離、そしてリバティアイランドが壁になった印象だが、次の目標は東京のマイル戦なので本領発揮だろう。おそらく東京新聞杯6着から左回りを不安視されるかもしれないが、はたしてそれが死角となるだろうか。今回繰り出した33.0の末脚をみる限り、そうは思えない。ただ、スローペースに強く、ある程度流れると最後に使える脚が長続きしない可能性はありそうだ。 強気に出なかった東京新聞杯は休み明けで目標が先だったからか。あるいは速い流れだと後ろで溜めざるを得なかったのか。流れに関係なく、今回のように強気な立ち回りで挑めれば女王の座は目の前だ。