「採用を強化したいが担当者がいない…」悩める中小企業を救う「地域の人事部」
採用難や早期離職による人手不足は多くの企業にとって重たい課題だ。中でも、専任の人事担当者がいない地方の中小企業の悩みは深い。経済産業省の調査によると、専任の担当者がいないケースは約4割に上り、経営者がその仕事を担わざるを得ないが、時間的な余裕やノウハウが乏しい。そんな悩める企業の救世主として注目されるのが、地域の中小企業の人事機能をまとめて代行する取り組み。名付けて「地域の人事部」だ。 モデル地域となっている長野県塩尻市ではNPO法人のMEGURUが中心となり、採用支援から企業向け研修まで幅広く手がける。特定の技能を生かして複数の仕事を掛け持ちする「複業」人材を地元企業につなぐ活動では、これまでに約60社に110人をマッチングさせた。MEGURUの横山暁一代表(31)は「活躍できる企業があり、いきいきと働くことができる地域にしたい」と意気込んでいる。(共同通信=功刀弘己) ▽地元の求人情報をまとめて発信
静岡県沼津市出身の横山さんは、名古屋市で人材サービス会社に勤務していた際、塩尻市がビジネスを通じた地域課題の解決に力を入れていることを知って興味を持った。妻が長野県出身だったこともあり、複業として2019年4月から塩尻商工会議所で「地域おこし協力隊」の活動を始めた。 まず取り組んだのが地元の中小企業約30社に対するヒアリング調査。人事部がない企業が多く、経営者の約8割が人事に課題があると回答した。このうち実際に求人を出しているのは2~3割にとどまる結果だった。 横山さんは「人事採用に向けた広報を強化しようにも、新たに広報担当の正社員やアルバイトを雇うわけにはいかない。民間に頼めば高額の請求がある。結局、社長が1人で抱え込んで、動けないことが多かったのではないか」と話す。 そこで、複業人材と地元企業のマッチングに取り組んだ。企業から課題を聞き取って整理し、インターネットサイトに求人情報を掲載。首都圏のフリーランスや特定の技能を持つ人材に発信した。申し込みがあれば、オンラインでの交流や採用面談なども支援した。