金正恩氏は本気か、南北統一放棄で警戒感-衝突なら世界への影響必至
(ブルームバーグ): 北朝鮮が過去何十年にもわたり敵に破壊の鉄ついを下すと宣言しても、世界中の多くの人々は耳を貸さなかった。だがここ数カ月、金正恩朝鮮労働党総書記が本気で戦争の準備をしている可能性があると一部の著名なアナリストらが警告し始めた。
北朝鮮を率いて13年目を迎えた金氏は、同国によって敵対勢力と見なされている国々が許容できる限界をより積極的に試している。核兵器・ミサイル開発の急速な進展に支えられ、金氏は2024年、北朝鮮の憲法から南北の平和統一を目指すとする一文を削除し、韓国を「壊滅」させる権利があると主張した。
こうした好戦的なレトリックはこれまでならほとんど顧みられないところだが、2人の著名アナリストが、今回は単なる威嚇にとどまらないと示唆する寄稿文を発表し、北朝鮮ウオッチャーらの間で議論が巻き起こっている。
元米中央情報局(CIA)局員ロバート・カーリン氏と核科学者ジークフリート・ヘッカー氏は今年に入り、北朝鮮問題を扱うウェブサイト「38ノース」を通じ、「1950年時の祖父のように、金氏は戦争に踏み切るという戦略的決断を下した」と論じた。その時期については予測していない。
両氏の見解は一般的なものではない。 大半のアナリストは、北朝鮮による本格攻撃は自暴自棄か自殺行為であり、韓国と米国の反撃を招き、金一族の約80年にわたる北朝鮮統治を終わらせることになるとみている。
ただ、ウクライナや中東で戦争が勃発した今、仮に朝鮮半島で戦争が始まれば、世界がつまずく可能性がある。韓国のみならず、世界経済、特に半導体のサプライチェーンに壊滅的な影響を与える恐れがある。
韓国国防省は1月、北朝鮮が全面戦争に踏み切れば「金正恩政権は終末を迎えると厳重に警告する」との声明を発表した。
火種
北朝鮮軍による1950年の韓国侵攻は、米国の不意を突いた。金氏の祖父で建国者の故金日成主席の下で、北朝鮮軍は朝鮮半島の大半を占領し、米韓軍がこれに反撃した。中国の参戦は膠着(こうちゃく)状態を招き、停戦には至ったが正式な平和条約は結ばれず、朝鮮半島は以来、北緯38度線付近で分断されたままだ。