今治市各地の海でボート競技の大会と海上自転車競走が開かれた

　今治市各所の海で9月29日、ボート競技の大会と海上自転車競走が開かれ、大勢の選手や観客で盛り上がった。（今治経済新聞） 【写真】10年前に始まった「海上自転車競走」 　鴨池海岸（今治市大西町九王）で開かれたのはボート競技「ビーチスプリントローイング」の大会。主催は今治ローイングクラブ。 　2028年のロサンゼルスオリンピックで初めて正式競技に採用されるなど、注目を集めている同競技。砂浜を走ってスタートした選手が艇に飛び乗り、海岸沖250メートルまでに設置されたブイを交互に交わし、砂浜に戻るまでのタイムを競うショートレース。 　大会事務局の野尻雅裕さんによると、国内では2019年に今治市で同競技の大会を日本で初めて開催し、今回で6回目を数える。今大会には中学生から社会人選手まで、61チーム127人が参加。オーストリアやラトビアからも選手が来日した。 　「2018年に香港の大会で同競技を知った」野尻さん。「荒れた波のコンディションで、転覆のリスクもある自然環境の中での競技に新たな可能性と面白さを知り、国内開催を検討した」という。今治市への移住者でもある野尻さん。「風光明媚で美しい鴨池海岸には魅力がある」と、同地での開催を決めたという。 　「まだオリンピック競技の方針も完全に固まっているわけではない新しい競技」としたうえで、国内選手のスキル強化にも可能性を感じているという。「今回の大会では、競技力向上を図ろうと、オリンピック開催国のアメリカから、世界選手権金メダリストで国の代表でもある選手を招いた」と話す。 　当日は2人漕ぎの「ダブルスカル」と4人漕ぎの「クォドルプル」の決勝が行われ、多くの観客から声援が飛び交った。同競技の魅力について「観客と選手の距離が近く、見える距離で勝負が決まるのが、従来のボート競技にはない魅力」と野尻さん。「今回のような国際交流を通じて、世界やオリンピックで活躍する日本選手がこの今治から生まれることを期待したい」と意気込む。 　同日、織田ヶ浜（東村）では「海上自転車競走」が開かれた。主催は海上自転車競走実行委員会。 　実行委員長の壷内和彦さんによれば、「サイクリングと造船、ものづくりの街・今治をPRしよう」と始まった同大会。今回で10回目を数える。当時は今治城の堀で開いていたが、コロナ禍を機に海上での開催へと移行し、同会場での開催は今回で2回目。 　第2回大会からは自作船でのタイムを競う部門を新設。地元や近隣県の高校にも声をかけ、地元企業や高校生が思い思いの自作船でタイムを競う。今大会は自作船部門のほか、動力源にインパクトドライバーを使う簡易電動部門が設けられ、自作船部門には11チーム、簡易電動部門には4チームが出場した。 　今治市内で永井タタミ店を営業する越智伸一さんは、簡易電動部門に初めて出場した。自身が提案する「防災畳」が水に浮くことを生かして、畳の上に自転車の骨組みを組み合わせ、ドリルドライバーで回転するプロペラを設置した。 　事前の試走では「うまくいった」が、5日前の最終調整でまさかの落水。ドリルドライバーが故障するトラブルに見舞われた。当日は代替のドライバーで挑んだが、水の中でプロペラが抵抗を受けて回転せず、最終的にはほうきとちりとりをオール代わりにして、手こぎでゴールした。「準備を重ねた道具で出場できず、悔しい。来年はリベンジを果たしたい」と悔しさをにじませた。 　同部門では高知県の須崎総合高校が優勝し、「沈まずにゴールできて良かった」と喜びを語った。自作船部門では、社内で自転車部を持つ新来島どっく（大西町新町）が5年ぶりに優勝を奪還した。 　来年以降の開催について、壷内さんは「もちろん、続けていきたい」と意気込む。「本気の大人たちも挑む中で、高校生にとっても勉強になる機会。高校生部門ができるくらいエントリーが増えてほしい」と呼びかける。