妻夫木聡×広瀬すず×窪田正孝×永山瑛太『るろ剣』大友啓史監督 直木賞受賞「宝島」実写映画化で共演
真藤順丈(原作者)
あらゆる近現代の物語は"沖縄"に通じるーーそう信じてコザのセンター通りでほぼ路上生活を送りながら構想を固めていたころは、本作を映像化しようという蛮勇がこの国の映画界に残っているとは思ってもみなかった。 たくさんのご厚意にあずかって、沖縄のロケやスタジオ撮影を訪ねる機会に恵まれたが、そこでさらに確信を深めることができた。大友啓史監督を始めとする傑(すぐ)れたスタッフや俳優陣が立ち働く現場には、戦後日本の"青春時代"ともいえる『宝島』の時代が現前していた。現場の袖には当時の資料写真が配され、美術や装飾によって風景は時間をさかのぼり、照明がほの暗い世相の陰と陽をさばき、モブの一人にまで注がれる演出のはざまを自在にカメラの目が抜けていく。ぶっちゃけ作り手として羨望や嫉妬をおぼえるほどの(この現場でぼくが『宝島』を撮りたいとすら願った。S・キングの『シャイニング』になりそうだから止めておくけど)とめどない現場の熱が、おなじ地平の、おなじ方向へと向かっている。この作品ならきっと、沖縄人たちが死に物狂いで獲得してきたもの、払われた犠牲、暗闇の奥から差しだしてくれている祈りの手を、映画という形でつかみ返してくれるはずだ。なおかつ、凋落(ちょうらく)するエンタメ産業にひとつの革新的な"解"をも示してくれるだろう。以上、原作者のひいき目抜きには語れませんけどね、これはとんでもないところまで到達する邦画になる。一人の映画ファンとして上映館で「あきさみよう!」とわななくような昂揚と歓喜をおぼえる日を心待ちにしています。