ラーメン店と好対照、中華料理店の倒産が低水準の謎
中華料理店とラーメン店の差
ラーメン店の倒産が増えた要因は明白だ。ラーメン店は参入障壁が低く、ブームに乗じた出店も多い。また、味や提供レシピには流行もある。物価高で食材や光熱費が上昇しても、値上げは「1,000円の壁」を乗り越えるのは容易ではない。こうしたことから収益悪化で倒産に至るケースが多いのが特徴だ。 一方、中華料理店も置かれた環境は同じだ。コスト高や人件費の上昇に見舞われているが、ラーメン店にない多彩なメニューがポイントだろう。担々麺などの麺類から回鍋肉などの肉料理、野菜炒めなど多種の料理を提供できることも強みになっている。 また、食材変更や量の調整が、調理人の技量で工夫できる。大盛りで価格競争力を高めることも可能で、行きつく先は中華料理ならではの対応力が「付加価値」を高める隠し味になっていることだろう。 都内の中華料理店の関係者は、「他の飲食店と同じでコストアップは厳しい。一番の強みは、地元に密着し安定した固定客を持っていることと、小規模運営でコストアップが最小限に済むことも大きい」と語る。加えて、「インバウンドやブームによる新規来店が増えていることで、のらりくらりとかわせているのではないか」と分析した。
大手チェーンも好調
(株)王将フードサービス(TSR企業コード:641133189)の8月の月次売上高(直営全店)は88億7,300万円で、単月では創業以来、最高売上を更新している。 「日高屋」などを運営する(株)ハイデイ日高(TSR企業コード:310463149)の8月度の売上高速報(全店)も前年同月比11.7%増と好調だ。3月から8月までの2025年2月期上期計は前年同期比13.2%増で、客数も伸びている。 中華料理店チェーンの(株)浜木綿(TSR企業コード:400782928)の2024年7月期の売上高は57億7,400万円で、3期連続の増収を確保した。大手チェーンは軒並み好調を持続している。 ◇ ◇ ◇ 長い歴史を持つ中華料理は、多彩な食材と調理方法で独自の進化を続けている。コロナ禍を始め、時々の苦難を乗り越えて町中華やガチ中華などのブームが追い風にもなっている。 だが、物価高や人手不足、後継者など、山積する課題ものしかかっている。ただ、新規開店時の設備コストが嵩み、技術力も必要な業態で、ラーメン店より新規参入のハードルが高いだけに乱立には至っていない。 果たしてラーメン店とは違う道を歩むのか。中華料理店の動向が注目される。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年9月27日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)