5年ぶり「走り参り」 暗闇にたいまつの炎、和歌山県串本の雷公神社
和歌山県串本町樫野にある雷公(なるかみ)神社で8、9日、例祭が営まれた。8日の宵宮では5年ぶりに火祭り神事「走り参り」があり、地元の若者らが長さ約4メートルある竹のたいまつを手に、暗闇の中で神社参りをした。 【雷公神社の神事「走り参り」の動画はこちら】 神社は樫野、須江の両浦の産土神(うぶすながみ)として崇敬されていた。1868年に社名を「雷公神社」と改称した。 走り参りは1107年、地元の浜に流れ着いた神様を、地区内にある大竜寺の住職がたいまつを持って迎えに行き、神社に祭ったことが由来とされている。地元で苦竹(ニガダケ)と呼ばれる篠(し)の竹を束ねてたいまつにし、海上の安全や豊漁を祈願する。使い終えたたいまつも魔よけの効果があるとされ、来年の祭りまで保管している。 例祭は新型コロナウイルスの影響で神事のみの年が続いていた。走り参りは2019年以来、久しぶりに行われた。 この日、神社の境内では神事や樫野祭典部による獅子舞の奉納があった。午後8時40分ごろ、迎え火を持った関係者1人が、神社から約800メートル離れた大竜寺近くの樫野集会所へ向かい、待機していた若者らのたいまつに火を移した。 約15分後、若者ら20人が火の付いたたいまつを持ち、「参るぞ」と大声を出しながら神社境内に続く50段ほどの石段を一気に駆け上った。帰りは「参ったぞ」と言葉を変えて石段を下りた。大竜寺にも立ち寄った。参道では、勇壮な若者たちによる炎の帯の様子を撮影しようとアマチュアカメラマンの姿もあった。 祭典部の福島宏至委員長(37)は「5年ぶりとは思えない力で、たまっていたものを一気に解放したようだった。コロナ前よりも走り参りの人数は少なかったが、負けないくらいの力だった。コロナの影響で開催するか悩んだ時期もあったが、やりたい気持ちが強く、今年はできると確信した。今年デビューした子もいるので、来年、再来年と続けて伝統を守っていきたい」と話した。
紀伊民報