早田ひなが語る“はりひな”ペアの進化。五輪2大会連続の混合金メダルに近づいた日本
パリオリンピック開幕が2週間後に迫った7月12日、味の素ナショナルトレーニングセンター(東京・北区)で始まった卓球日本代表の強化合宿が公開された。 【動画】パリオリンピック|卓球競技日本代表選手 記者会見 男子は張本智和(智和企画)、戸上隼輔(井村屋グループ)、篠塚大登(愛知工業大学)、女子は平野美宇(木下グループ)、張本美和(木下グループ)がそれぞれ練習パートナーと打ち合い汗を流す中、女子日本のエース・早田ひな(日本生命)の姿が見当たらない。 早田はこの日の朝、練習拠点である大阪から東京に移動したため練習には参加せず、練習後に行われた報道陣のインタビューに応じた。
約2カ月に及んだ海外遠征から帰国したばかりで、「スーツケースが5、6個、部屋にあって、それをとりあえず片付けて、こっち(東京)に来る余裕もないぐらいだった。目の前のことをこなすのに精一杯」とオリンピック初出場の早田。 24歳の誕生日を迎えた先週7日には、2019年のペア結成から5年になる張本智和とWTTスターコンテンダーバンコク混合ダブルスで優勝。 6月のWTTコンテダーザグレブから4大会連続優勝の快進撃を飛ばし、韓国のイム・ジョンフン/シン・ユビンを抜いてパリ五輪の第2シード獲得に成功した。 ベンチに入った男子日本代表の田㔟邦史監督が「針の穴に糸を通すよりも難しかった」と表現する第2シードの獲得は、3年前の東京オリンピックで水谷隼(木下グループ)さんと伊藤美誠(スターツ)の“じゅんみま”ペアと同じ位置。 2人が成し遂げた打倒中国と日本卓球界初のオリンピック金メダルの歴史的快挙に続くには是が非でもクリアしなければならないラインだった。
第1シードの王楚欽/孫穎莎(中国)と第2シードの張本/早田が決勝まで順当に勝ち上がった場合、「何かが起きたら一番勝てる可能性があるのはミックスダブルスかなとも思う」と早田。 「それを実現させたのが東京オリンピックの伊藤選手と水谷選手(決勝で中国の許キン/劉詩ブンを破り金メダル)。そういう意味で張本選手と2人なら中国と戦うのは怖くない」 勝機に目を向けるとともに脳裏によぎるのはリザーブとして戦況を見守った東京オリンピック。文字通りの死闘となった混合ダブルス準決勝だ。 第2シードの水谷/伊藤が第7シードのフランツィスカ/ソルヤ(ドイツ)と激突。 フルゲームにもつれ込んだ大接戦は最終の第7ゲーム、水谷/伊藤が2-9ビハインドの大ピンチを迎えたが、そこから10オールに並び、さらにマッチポイントを繰り返す一進一退の攻防で、最後は16-14で日本が大逆転勝利を収めた。 「東京オリンピックの伊藤選手と水谷選手のドイツ戦を自分の目ではっきりと見ている。そういうこと(番狂わせ)が起こり得るのがオリンピックだと思っているので、どんな状況にも備えて準備したい」 右肩がりに調子を上げる張本/早田も、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。特に苦しかったのが今年3月。 「追い込まれたのはシンガポールスマッシュ。私が2月の世界卓球(2024釜山)の後に体調を崩してしまい、いい状態で戦えず、準決勝で韓国ペア(イム・ジョンフン/シン・ユビン)に負けてしまった。そこから始まって5月のWTTリオデジャネイロ決勝でも同じ韓国ペアに0-3で負けて流れを変えられない時期がありました」 トンネルを抜けたのは6月に入ってすぐのWTTコンテンダーザグレブだった。 「ヨーロッパ遠征1戦目のザグレブで優勝したことで一気に流れを変えることができました。そこから4週連続で優勝できて苦しい時期を乗り越えられた」と早田は振り返る。 怒涛の4大会連続優勝の背景には早田のコンディションが戻ったことと張本の成長がある。 とりわけ、ここ1年の張本は心身ともにたくましくなり、かつて3歳下の張本を早田が精神面で引っ張る姿がよく見られたが、それもめっきり少なくなった。 張本のことを「シングルスでも成績をどんどん残しているので自信がついているんじゃないか」と早田。 「今はお互い提案し合って、試合中に張本選手が『男子選手のボールはこうだから、ここで待って』とか、そういう駆け引きについて2人で話すことが多くなりました。ダブルスは1人じゃ、どうにもできない。ペアのコミュニケーションがすごく取れるようになったのがここ最近の一番の勝因です」
卓球の日本代表メンバーは18日にパリへ発つ。パリオリンピックの混合ダブルスは開会式の翌日27日に1回戦が始まり、30日にメダル決定戦(3位決定・決勝)が実施される。 中国以外にもライバルは多いが、東京大会に次ぐ日本の金メダルとあの歓喜に期待せずにはいられない。 (文=高樹ミナ)
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