「45歳以上の正社員化」は難しい…働き盛りの3~4人に1人が非正規となった「深刻実態」
平均年収443万円――これでは普通に生活できない国になってしまった。なぜ日本社会はこうなってしまったのか? 重版7刷の話題書『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』では、〈昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配……〉といった切実な声を紹介している。 【写真】「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃!
私たちは今、どんな社会に生きているのか
今、私たちが置かれている状況はどうなっているのか。 内閣官房に就職氷河期世代支援推進室を設置した2019年、政府は、就職氷河期世代を「おおむね1993年卒から2004年卒で、2019年4月現在、大卒でおおむね37~48歳、高卒で同33~44歳」と定義し、同世代の中心層を35~44歳の「非正規の職員・従業員」371万人として集中支援するとした。 支援の対象は、非正規になった理由が「正社員の仕事がないから」という50万人と、非労働力人口のうち家事も通学もしていない無業者40万人など合わせて100万人。今後3年間で30万人を正社員にすると目標を掲げていた。 ただ、政府が示した中心層35~44歳で考えると問題を見誤る。45~49歳だけで非正規社員は226万人もいて、氷河期世代全体の非正規社員は約600万人に上ったからだ。多くのキャリアカウンセラーが「正直、45歳以上の正社員化は難しい」と口を揃える状態だ。 国がいう2004年卒より後にも不景気の余波があり、就職に大きな影響を与えた。一時的に就職率が上がったが、求人があるのはブラック企業ばかり、という実態もあったからだ。当初から筆者は2012年頃までを就職氷河期と考えるべきだと見ていたが、そうした見方は国会でも取り上げられ、その後、支援対象者は50代に広がった。
この20年で非正規雇用率が上昇
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」によって新卒採用が回復したと思われがちだが、実際はそれは正しくない。団塊世代がリタイアし、15~59歳の労働力人口がピーク時より500万人も減少した2011年以降、人手不足感が強まって就職率が回復していったに過ぎなかった。 年齢層別に2002年と2021年とで非正規雇用を比べてみると、非正規雇用の率が上昇していることが分かる。25~34歳は20.5%から22.5%へ、35~44歳は24.7%から27.1%へ、45~54歳は27.8%から31.0%へと増えている。働き盛りの4人に1人あるいは3人に1人が非正規なのだ。 当然、40代の賃金も減っている。 国税庁の「民間給与実態統計調査」から、金融不安が起こった1997年と2021年の40代男性の年収を比べてみたい。 40~44歳では645万円から584万円となって年間61万円減、45~49歳は695万円から630万円になって年間65万円減っている。同調査から給与の分布を見ると、年収400万円以下が53.6%と半数以上を占めている。
地域別・男女別の年収の実態
地域別の年収は、国税庁の国税局別の給与額から把握できる。 2020年の年収を男女別で見ていくと、男性で最も高いのは東京の608万2000円、次いで大阪の540万4000円、名古屋の534万2000円だった。最も低いのは沖縄の400万円だった。 女性の場合は、最も年収が高いのは東京の332万1000円、次いで大阪の295万7000円で、他は250万~270万円程度に留まる。
小林 美希(ジャーナリスト)