「とても遊び場に困っています」 お役所動かした少年の熱意 議員に手紙、署名・請願で実現 島根県浜田市
「ボールを使える遊び場がほしい」。島根県浜田市の浜田一中3年佐藤仁さん(15)が市議会や市に2年半働きかけ続け、新たな公園整備につなげた。市を動かす大変さとともに、声を上げ、行動する大切さをかみしめている。 【地図と写真】浜田市が公園整備を決めた場所 きっかけは小学校時代の失敗。地元の松原町には公園がなく、自宅脇の駐車場で遊んでいて、友人の蹴ったボールで近所の窓ガラスを割ってしまった。6年生になり、下級生のために何とかしたいと、顔見知りの市議に手紙を書いた。「とても遊び場に困っています」 市議が2020年12月にあった市議会定例会議の一般質問で手紙を取り上げたことを受け、佐藤さんは21年7月、市民が議場で要望を述べる「市民一日議会」に登壇。近所にあった市子育て支援センター跡地(3400平方メートル)を生かすよう求めた。 しかし、市の動きがなかったため、22年2月、地区の児童たち16人の署名を添えて市議会に請願書を提出。「請願はインターネットで調べて知った。ほかの子のためにも途中までやって『なし』にはしたくなかった」と振り返る。 請願はいったん継続審査となったが、6月の定例会議で、必要な整備の検討を求める付帯決議が採択された。採択を受け市は、23年3月、新たに「身近な公園整備基本方針」を策定。5月にセンター跡地の一部(500平方メートル)を公園にすることを表明した。ことし夏頃からの利用開始を見込む。 一方で市は、「子育て世代が安心して遊べる場所との両立は難しい」とし、ボール遊びの場は800メートル離れた下水道処理場予定地近くに設けることを決めた。利用開始時期は未定だ。 4月に県外の高校へ進学する佐藤さんは「公園ができることはうれしいが、あの頃友達や下級生と遊びたかった。なかなか話が進まないと感じた」という。だが、願いをかなえるには「当事者が声を上げた方がいい。仲間をつくって一緒に行動することが大切」と、思いを語った。
中国新聞社