放射線治療の二つの手法 琉球大学病院の移転で増える専用室 アイソトープ治療の拡充へ準備
[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1346) 放射線科には大きく分けて二つの仕事があります。画像検査を用いて病気を診断する画像診断と、放射線を使って病気を治療する放射線治療です。 【写真】建設が進む琉球大学病院 放射線治療も大きく二つに分けることができます。一つは体の外から放射線を当てて病気を治療する外照射で、一般的に放射線治療というと、こちらを指す場合が多いです。もう一つは体の中から放射線を当てて病気を治療する内照射です。内照射は放射性同位体(アイソトープ)を用いる治療法で、アイソトープ治療とも呼ばれます。 アイソトープ治療の一つに放射性ヨード内用療法があり、甲状腺機能亢進(こうしん)症を呈するバセドウ病や甲状腺がんの一部(高分化型乳頭がん・濾胞(ろほう)がん)が対象となります。これらの病気は放射性ヨードを特異的に取り込む性質があります。病気に取り込まれた放射性ヨードからはβ線と呼ばれる放射線が出て、このβ線によって病気にダメージを与えることができます。 このように、アイソトープ治療では放射線を出す薬剤を直接病気に届けることができます。使用される放射線は体内で飛ぶ距離が数ミリ以下と非常に短いです。そのため病気に集中して放射線を当てられ、病気以外の場所で放射線が人体にダメージを与えることはありません。 放射性ヨード内用療法は通常外来通院で行いますが、遠隔転移のある甲状腺がんの治療には入院が必要です。これは使用する放射線の量が多いため、法律により専用の治療室での入院が義務付けられているからです。沖縄県では琉球大学病院(西原町)に専用治療室が一つしかありませんでしたが、来年の西普天間住宅地区跡地(宜野湾市)への病院の移転で2部屋に増える予定で、より多くの患者さんに治療できる見込みです。 移転に伴い、ルテチウムオキソドトレオチドを用いた新しいアイソトープ治療も計画されています。この薬剤は神経内分泌腫瘍の治療に使われ、2021年6月に保険適用されました。これまでは専用治療室が不足していたため実施が困難でしたが、新病院では治療を開始できるよう準備が進められています。(飯田行、琉球大学病院放射線科=西原町)