「箍」(2月1日)
「箍[たが]」。若い世代には、ピンとこないだろうか。竹を割りたがねた輪を指す。かつて普段使いした桶[おけ]や樽[たる]の外側にはめ、形が崩れないように引き締める。転じて「箍が外れる」は緊張や束縛が取れ、締まりがなくなるの意だ(広辞苑)▼政治の箍は、外れるどころか切れてしまったのか。自民党安倍派の政務官2人の辞任が決まった。政治資金パーティーを巡って、不記載が判明したためという。捜査は国会議員ら10人の立件で終結したが、闇はまだまだ深いのか。被災地に思いをはせる「復興国会」となるべきなのに。「裏金国会」とは何ともやり切れない▼押しも押されもせぬ自動車のトップメーカーは、信頼が大きく揺らいでいる。エンジンの認証不正問題を巡り、経営陣が謝罪する事態に。出荷停止は、国民になじみの深い10車種に及ぶ。車は人の命を預かる。「まやかし」など、あっていいはずがない。今回に限らず、企業倫理の箍も、しばしば問われている▼「箍が緩む」には「老いぼれる」の意味がある。国力を表すともされるGDPは、ドイツに抜かれ世界4位に転落する見通しという。この国は衰えてしまったのか。箍をはめ直さなくては。誰も彼も。<2024・2・1>