【衆院選/山形】前大臣の自民候補に野党2候補が挑む三つ巴の県3区 山形の選択(4)
さくらんぼテレビ
シリーズで伝えている「衆院選・山形の選択」。県3区は、「政治とカネ」で攻勢を強める野党系の2人の候補に、矢面に立つ自民党候補。三つ巴の構図の中からそれぞれの戦略の違いも見えてきた。 県3区に立候補しているのは、届け出順に、立憲・新人の石黒覚氏(68)、共産・新人の山田守氏(62)、自民・前職の加藤鮎子氏(45)の3人。 「ありがとうございます!」 選挙戦の最大のカギは「知名度不足」の解消。 国民民主・立憲民主・連合山形の2党1団体が擁立した立憲民主党の石黒覚氏は、選挙戦での遊説を通して、出身地の酒田以外の地域でも手応えを感じ始めていた。 (立憲・新・石黒覚氏) 「けっこうみんな手を振ってくれてうれしい、いいですね! すごいな何か…」 (立憲・新・石黒覚氏) 「巨象に蟻が挑むようなものだが、そうであっても競り合って勝ち上がって行かないと、議員として仕事ができない」 訴えるのは、「教育の充実」「農林水産業の再生」そして大きな被害にあったふるさとの「防災」など。 10月20日の総決起集会では、応援に訪れた議員が舌鋒鋭く「世襲批判」も繰り広げた。 (立憲・杉尾秀哉参院議員) 「やっぱり世襲政治、『家業』にしてはダメ。そういう人があまりにも多すぎて、失われた30年で政治にダイナミズムが全くなくなった。政治が自分たちのための『内輪の政治』になってしまった」 (立憲・新・石黒覚氏) 「けっこう高かったんだよ、これ(ジャンパー)。この前女房から買ってもらったんだけど、こんな高いの要らないと言ったんだけど」 気遣い屋で庶民派の一方、旧・平田町議時代から20年以上、地方議員として政治に携わってきた「地域への愛」は人に負けないと胸を張る。 10月17日、戸沢村での遊説の際には大雨で被災した女性の涙の訴えに耳を傾けた。 (被災者) 「台所で寝てる、タンスも何にもない。融資でなんかで復旧できない。石黒さん助けてください、蔵岡を!」 (立憲・新・石黒覚氏) 「(涙に)本気にならないといけないと、もう1回自分に言い聞かせ奮い立たせていただいた。国民の声に応えられるのか、私たちも試されている。奢らずに行きたい」 (共産・新・山田守氏) 「生活協同組合で仕事をしてきて、労組で専従の経験もある。そこはほかの候補者と違う。『働く者の立場』でものを考えてきた」 共産党の新人・山田守氏は「生活者の目線」を大切に、街頭演説では「非正規労働の課題解決」「賃金上昇」に加え、自民党の政治を「金権腐敗」と評して厳しく指摘している。 (共産・新・山田守氏) 「ウラ金議員83人、どこの企業からいくらもらって、何に使ったか、誰1人説明しようとしない。こんな政治で良いのか問われている」 屋内での個人演説会は行わず、選挙区内をくまなく選挙カーで走り、街頭で訴える独自の選挙戦。 (蔵岡の住民) 「あの窓のギリギリまで水が、修復もかなりきつい。現状では復旧しきれていない」 「現場主義」を第一に豪雨災害の被災地にも足を運び、遊説のさなか、こまめにメモをとりながら住民の話に耳を傾ける。 こうした活動の積み重ねが少しずつ手応えを生んでいた。 (共産・新・山田守氏) 「手振りなんかしていただいて、一定の反応はあると思う」 (日本共産党・市田忠義副委員長) 「自民党の表紙は変わった。しかし『表紙だけでなく中身を変えてほしい』というのがみなさんの願いではないでしょうか」 また、今回の選挙は比例区にも力を入れていて、知名度が高い党の市田副委員長が応援に駆けつけ、山田氏の名前と政党名の両方の周知を図りながら支持拡大をねらう。 (共産・新・山田守氏) 「引き続き日本共産党の訴え、特に軍事優先・大企業優先で良いのか、今の政治のゆがみを正す政策を訴えていきたい」 (自民・前・加藤鮎子氏) 「朝刊に“接戦”と出まして、これまでにない厳しさを感じております」 10月17日、鶴岡市で街頭演説に立った自民党の前職・加藤鮎子氏の表情には厳しさがにじんでいた。 「よろしくお願いします、頑張ってください! 頑張ります! お世話になってます、ありがとうございます」 自らは対象外とはいえ、党の「政治とカネ」の問題をめぐり大逆風の中での選挙。 加えて「世襲」に対する世間の目も厳しさを増す中、選対本部は今回「ある戦略」を打ち出していた。 (加藤鮎子選対本部・中目千之本部長) 「自民党というだけで嫌な顔をされる環境。加藤鮎子候補がこれまで行ってきた業績を高く評価してそれを訴えていきたい」 公示後、真っ先に向かった被災地での街頭演説では、「閣僚」として内閣の中心にいたからこその実績を強調した。 (自民・前・加藤鮎子氏) 「大臣として政府への要望をしっかりさせていただき、地方自治体の負担が少ない状況での復旧復興が進められるよう財政支援を取りつけた」 「ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます」 大臣時代はあまり地元に戻れなかったと悔やむが、与党ならではの「強固な組織力」と衆議院議員を3期続けて務めてきた「知名度」は健在。 また、これまで距離があると見られていた吉村知事が今回、「大雨からの復旧に尽力してくれたお礼」にと、加藤氏の選挙では初めて事務所を激励に訪れた。 (自民・前・加藤鮎子氏) 「一日も早く議員バッジをつけて仕事に戻って、地域のため・地元のために仕事を続けさせていただきたい、その思いでいっぱい」 得意分野の「少子化・子育て政策」に「復興や高齢者支援」などのさまざまな課題に際し、政権与党にいる立場だからこそできるという「経験と実績」を活かした戦いが続いている。 (自民・前・加藤鮎子氏) 「とっても温かく激励いただいている。しっかり頑張らなきゃ、頑張ります!」
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