【タワマン最上階は25億円】アジアマネーを呼び込む大阪の“不動産バブル” 「万博効果が限定的なら海外投資家は早めに逃げ出す」との見方も
不動産の価値はずっと上がり続ける──そんな1980年代後半の“土地神話”が脆くも崩れ去るさまを、平成の日本人は目撃した。今また、令和の日本で続く不動産価格の高騰。「バブル超え」ともいわれるこの活況もまた、終焉を迎えるのか。実際、取材を進めると、右肩上がりだった現場に異変が起きていた。【東西現地ルポ・大阪編。東京編を読む】
大阪でバブルが沸騰していた。象徴がJR大阪駅の北側に広がる再開発区域「うめきた」だ。 「大阪市内ではタワマンの最高価格が上がり続けている。西梅田の『ブリリアタワー堂島』(地上49階・457戸)が2021年に10億8000万円で最高分譲価格を更新したが、建設中の『グラングリーン大阪 ザ ノース レジデンス(地上46階・484戸)は最上階が25億円。あっさりと塗り替えた」(全国紙経済部記者) 梅田、淀屋橋、本町、心斎橋、難波といった地下鉄御堂筋線沿線に高級物件が林立し、市内全域で20階建て以上のタワマンが250棟を数える。タワマン物件を扱う市内の不動産業者が言う。 「中古でも新築時の価格より高く売れるので、大阪の同業者には“タワマンは住宅ではなく美術品”と表現する者もいる。大阪のタワマンは投資目的の購入者が3割強、6~7割が(低層階を中心に)居住用として購入している印象。『うめきた』は東京の企業関係者が大阪の拠点にしたり、中国の投資家の購入も多い。 中国の投資家で数か月間のうちに同じ棟の4部屋を購入した人もいた。タワマンは賃料が高く設定できて値下がりも少ないとの“神話”があり、中国人はほぼ100%が賃貸として活用する。ローン購入の日本人は10年くらいは住むが、中国人は賃貸で利益を出し、高く売れる2~3年のうちに転売するケースが多い」
外国人需要への依存度が高いことがリスクに
『なぜマンションは高騰しているのか』著者で経済・社会問題評論家の牧野知弘氏はこう解説する。 「東京よりもマンション価格が安く、地理的にアジア各国に近い大阪の高級物件に、中国を含めたアジアマネーが入っているのは事実。御堂筋沿いのなかでもミナミと呼ばれる難波地区ではマンションのみならず、インバウンド需要を見越してアジア系資本がホテルを所有するケースも非常に多いです」 ただ、外国人需要への依存度が高ければ、それがリスクにもなる。 「大阪は2025年の万博に向けて盛り上がっているように見えるが、あくまでひとつのイベントに過ぎない。前回の公示地価で大阪の商業地が9.4%も上がって驚きましたが、ビジネス拠点が東京一極集中の現状では張りぼて感が否めません。 海外投資家の心理を考えると、万博効果が大したことなさそうと見たら、早めに利益を確定して逃げようとする動きも出るでしょう。それが年内に始まれば、万博の頃には海外投資家が皆引き上げているといった事態も考えられます」(牧野氏) (東西現地ルポ・東京編を読む) ※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号
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