アングル:マカオのカジノ、「プレミアムマス」層主流化で業界内に明暗
Farah Master [香港 4日 ロイター] - マカオのカジノを訪れる客層の変化に伴って、業界内の明暗が鮮明になっている。比較的事業規模が小さいMGMチャイナやウィン・マカオが勝ち組で、大手のサンズ・チャイナやギャラクシー・エンターテインメントがこれを猛追する態勢、というのが現在の構図だ。 カジノへの客足は総じて戻ってきているが、その中心は、1回当たりの掛け金が数百ドルから数千ドル前後のいわゆる「プレミアムマス」層。かつてマカオのカジノ収入の大半をもたらしてくれた「VIP(ハイローラー)」と呼ばれる富裕層は厳しい規制のために姿を消し、最も掛け金が少ない「マス(大衆)」層の来訪数は、まだ新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年の水準を回復していない。 MGMチャイナやウィン・マカオは、こうしたプレミアムマス層を主要顧客としているため、客足持ち直しの恩恵が大きい。 JPモルガン(香港)のアナリスト、DS・キム氏は、中国本土の景気がさえない中で、マカオは健闘しているものの、全ての事業者の業績が改善しているわけではないと指摘。マス層向け事業が際立って大きいサンズやギャラクシーは、自社や市場の期待ほど株価に勢いが出ていないと付け加えた。 実際MGMチャイナとウィン・マカオは年初来で株価がそれぞれ46%と15.7%上昇している半面、ギャラクシーは11.2%安、サンズは16.7%安とさえない。 モーニングスター(深セン)のアナリスト、ジェニファー・ソン氏は「今のところ、客足とカジノ需要がいずれも19年の水準に戻っていない中で、MGMチャイナとウィン・マカオは相対的な事業規模の小ささとプレミアムマス層に軸足を置いている点から、顧客へのマーケティングやセールスなどの効率性が強みになっている」と述べた。 <各社の動向> マカオ政府のデータに基づくと、足元の来訪者数は19年のパンデミック前の75%で、今年のカジノ収入は同80%となる見通し。 これまでのマカオのカジノ市場回復で最大の追い風を受けたのはMGMチャイナで、マカオの全カジノ収入に占めるシェアは19年の9.5%から今年17%超に切り上がった。同社はまた昨年1月以降に政府からテーブル数増加を認められた唯一の事業者で、宿泊施設の拡張にも乗り出している。 ウィン・マカオのクレイグ・ビリングス最高経営責任者(CEO)は、ホテル1室当たりの収入に関する市場シェアで上位陣に挑む姿勢を続ける、と強気の姿勢を見せる。 大手側も負けてはいない。ギャラクシーのイン・タット・チャン最高財務責任者(CFO)は、来年高級ホテルの営業を開始するとともに、プレミアムマス層からの需要拡大を見込んでいると明かした。 依然としてマカオ最大のカジノ事業者であるサンズ・チャイナのグラント・チャムCEOは、客単価収入はパンデミック前を上回っており、客足全体が今後パンデミック前に戻れば、その恩恵を最も享受する立場にいるのが同社だと強調した。 <産業多角化> マカオにとって、プレミアムマス層重視はカジノ以外の消費支出増加というメリットももたらしている。マカオ観光局によると、昨年のこうした支出額は19年比で11%増え、710億パタカ(88億2000万ドル)に上った。 当局は地元産業構造をカジノだけでなくショッピングや美術館、各種ショーなどの分野に多角化することを目指しているだけに、これは喜ばしい流れだ。 中国本土の景気がさらに減速すれば、マカオにもその影響が及び、真っ先にカジノが打撃を受けるとみられるため、事業者としてもカジノ以外のさまざまな娯楽を導入し、幅広い層の客を呼び込むことが大事になる。 シーポート・リサーチ・パートナーズのシニアアナリスト、ビタリー・ウマンスキー氏は、非カジノ投資がより多くの来訪者を生んで、カジノ事業自体のてこ入れ役にもなってくれるとの見方を示した。 現在は来訪者の7割が中国本土からで、それ以外の地域からの集客にも力が注がれつつある。