樹齢千年「竜灯杉」、クローン技術で歴史つなぐ 研究機関が苗木育成、「里帰り」果たす 青森・深浦町
青森県深浦町にある推定樹齢約千年の巨木で町指定天然記念物の「円覚寺(えんがくじ)の竜灯杉(りゅうとうすぎ)」。枯損の恐れがあったが、国立研究開発法人森林研究・整備機構「森林総合研究所林木育種センター東北育種場」(岩手県滝沢市)が枝先を採取し、接ぎ木で苗木を増殖させることに成功した。苗木は26日、同町深浦浜町の円覚寺に“里帰り”。同寺は「大切に育てていきたい」としている。 竜灯杉は、坂上田村麻呂が807年に創建したと伝えられる同寺境内にあり、江戸時代の北前船の船乗りや地元の漁師たちから、竜神が宿り、船乗りを助けてくれる神木としてあつい信仰の対象となってきた。樹高約33メートル、地面から1.2メートルの高さ部分の直径は2.36メートルある。 町教育委員会は2020年、幹に穴が開き、枯損の恐れがあることから、同育種場に巨木・名木の遺伝子を受け継ぐ後継樹の育成事業「林木遺伝子銀行110番」の利用を申請。同育種場は同年3月、竜灯杉から穂木となる枝先を採取して同育種場の台木に接ぎ木し、竜灯杉の遺伝子を受け継ぐ「クローン苗木」8本の育成に成功した。 今回、同寺に里帰りした苗木は高さ約60~70センチの3本。今秋以降、境内に植え、残り5本は同育種場が保存する。三重野信場長から苗木を受け取った海浦誠副住職(50)は「皆さんの尽力でクローン苗木ができた。長い歴史をつなぐよう、大切に育てていきたい」と話した。 三重野場長は「(樹齢)千年という古い木。樹勢の面では経験がない領域で、心配もあったが成功してほっとしている。スギの品種改良自体は日頃からよくやっているので、その技術を応用できて良かった」と語った。同育種場によると、青森県からはこれまでに計10件の後継樹育成を受け付けたという。