〈奥能登豪雨〉命、暮らし押し流す 優しい弟「まさか」 珠洲、死亡の羽田さん
●地震に耐えた家、土砂で倒壊 土砂崩れで家屋が倒壊した珠洲市若山町広栗では、中にいた羽田登喜雄さん(72)の死亡が確認された。羽田さんの姉、田甫初美さん(75)=能美市=が22日、北國新聞社の取材に応じ、「5月の連休中に会ったのが最後になった。まさかこんなことになるなんて。優しい人で、近所の人からも慕われていたのに」と声を詰まらせた。 【写真】若いころの羽田登喜雄さん(住民提供) 田甫さんによると、家は能登半島地震による倒壊を免れ、羽田さんは避難所などには入らず、自宅で生活を続けていた。田甫さんは盆に帰省できなかったため、涼しくなってから訪ねようと考えていたところに大雨が襲った。 ●地域行事も積極的 21日午前10時ごろ、近所に住む女性(85)が2階の窓から外を見た際、羽田さん方が土砂崩れに巻き込まれているのに気付いた。知人を通じて市などに連絡し、近隣住民は家の外から羽田さんの名前を呼び続けたが、返事はなかった。 近隣住民によると、羽田さんは地域の行事や祭り、草刈りなどに積極的に参加していた。区長の正司恵造さん(76)は、地震で多くの人が広栗を離れたとし、「地域にとって大切な人を失った。復興に向けて頑張ろうと話していたところだった」と肩を落とした。