「裏切るわけにはいかない」…被災した輪島の日本酒「白菊」の味をつなぐ 長野で純米吟醸酒完成
能登半島地震で被災した石川県輪島市の白藤(はくとう)酒造店の酒造りを代行し、「奥能登の白菊純米吟醸」を醸造している長野県木祖村の湯川酒造店で13日、瓶詰め作業があった。杜氏らは、仕上がりの良さや責任を果たせたことを喜んだ。4月初旬に発売予定で、売り上げは白藤酒造店へ渡す。 【画像】瓶詰めされる「奥能登の白菊純米吟醸」
湯川酒造店の湯川尚子社長(44)と夫で杜氏の慎一さん(56)は、白藤酒造店蔵元の白藤喜一さん夫婦と15年ほどの付き合い。湯川社長は1月末、震災で醸造棟などが甚大な被害を受け、水道が止まった白藤酒造店へ生活用の水を届けた。その際、湯川社長が醸造の代行を提案した。
慎一さんは「白菊好きの期待や白藤さんを裏切るわけにはいかない」と緊張感を持って酒造りを始めた。預かった酒米2種類のうち1種類は初めて扱い、糖化と発酵のバランスを手探りした。白藤酒造店の醸造レシピで味を極力近づけ、湯川酒造店らしいフレッシュさやきれの良さもにじむ出来になった。13日は、前日に絞った酒を機械で瓶に詰めた。殺菌、消毒やラベルを貼り、720ミリリットル入りで約2300本ができる見通し。
石川、長野両県を中心に酒販店31軒で1本2300円(税別)で販売する。被災した輪島市以外の酒販店が利益を減らすことに協力し、白藤酒造店に渡る金額を増やす。湯川酒造店も酒税と経費以外は受け取らない。慎一さんは「被災した1月は寒仕込みの時期で造り手として心痛が分かる。銘柄をつなぎ、飲んで応援したい人たちに届けられそうで良かった」と話した。