日本の少子化は「根拠なき対策」のせいだった…!「東京ブラックホール論」の欺瞞を暴く「東京の出生率が高い」データを一挙公開する!
東京の「合計特殊出生率」が低いワケ
それでも、合計特殊出生率が東京都でもっとも低く出るのは、進学や就職などで出産を予定していない女性が増え続けるか准らだと考えられる。 これも財務総研で示した中里准教授の試算が分かりやすい。 下記の図のように東京に出産を予定している女性が50人、同様に地方に50人いて、出生する子どもがそれぞれ50人いたとしても、東京に出産を予定しない女性が75人いて地方に25人しかいないとなると、合計特殊出生率は東京が0.4、地方で0.67と東京は低くなる。
「東京ブラックホール論」の欺瞞
なぜ、エビデンスを軽視した「東京ブラックホール論」という言説が広く拡散されてしまったのか。 人口戦略会議は民間有識者らで構成される有志団体だが、議長には日本製鉄名誉会長の三村明夫氏が就き、副議長は10年前の2014年に「消滅可能性自治体」という言葉を世に広めた日本郵政社長の増田寛也氏、さらに岸田内閣の官房参与で元厚労官僚の山崎史郎氏や日本銀行元総裁の白川方明氏が名を連ねる。 日本の中枢を率いてきた名士たちの提言に、マスコミが飛びついたことも影響しただろう。 ほかにも、選挙では都市部で弱い与党・自民党が、地方への利益誘導の予算配分をこれまで意図してきたことも少なからず影響しているのではないだろうか。 「地方創生」は、別名「ローカル・アベノミクス」とも呼ばれ、2014年に安倍晋三内閣で始まった。東京一極集中の是正を目的に地方の活性化が目的だったが、いつしか少子化対策と一体として語られるようになった。 今回の「東京ブラックホール論」は、これに火をつけた。
「根拠なき政策」で大丈夫なのか?
人口戦略会議が「ブラックホール自治体」を発表したのは4月24日だった。それから3週間後の5月15日、全国25道府県知事で構成する「日本創世のための将来世代応援知事同盟」が宮崎市でサミットを開いた。 議論の中心は人口減少対策で、「人口戦略会議」の三村昭夫議長が招かれ講演している。 報道によれば、ある知事からはこんな声が上がった。 「雇用が集中しているので人口が集中する構造。制度的に分散してもらい、出生率の低い所から高い所に人が移れば出生数が増える」(毎日新聞5月16日) しかし、ここまで見てきたように地方に就職口や大学を増やして活性化することが、少子化の改善に直結するかと言えば、その根拠は見当たらない。 地方創生が悪いということではない。また、東京一極集中に問題がないということでもない。少子化対策と地方創生を一体として考えるには、根拠に乏しいのだ。 もっとエビデンスを精査しなくていいのだろうか。 6月7日、合計特殊出生率が1.20となったことについて武見敬三厚労相は、「若年人口が急激に減少する30年代に入るまでの6年間がラストチャンスだ」と述べた。 果たして、日本の少子化対策は間に合うだろうか。 さらに関連記事「「第3子以降に1000万円」は実現可能…! 岸田より自治体が考える「超・少子化対策」のほうが「異次元」に思えるワケ」では、日本の待ったなしの少子化対策について3人の政策通の議論をお届けする。
藤岡 雅(週刊現代 記者)
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