フロム・宮崎氏「複数のプロジェクトが進行中」。「エルデンリング」DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」PSアワードインタビュー
プレイステーションを盛り上げたバラエティ豊かなヒットタイトルを称えることを目的として始まった「PlayStation Awards」。初代プレイステーションの発売からちょうど30周年を迎える12月3日に、通算30回目となる「PlayStation Partner Awards 2024 Japan Asia」(以下、PSアワード)が開催された。 【画像】「ELDEN RING」DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」 今回、多くの表彰タイトルの中から、日本・アジア地域で開発されたタイトルにおいて、2023年10月から2024年9月までの1年間で発売し、全世界売上上位3タイトルに贈られる「GRAND AWARD」を受賞した「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」(フロム・ソフトウェア/バンダイナムコエンターテインメント)の宮崎英高ディレクターへ囲み取材が行なわれた。 取材では本DLCの開発秘話や次回作についてを聞くことができた。本稿では、宮崎氏へのインタビューの様子をお届けする。 ■ 複数のプロジェクトが進行中 ――DLCという枠を超えるほどのボリュームと密度でユーザーの遊び方がとても多彩だったと思います。発売後の遊ばれ方で宮崎さんが印象に残ったものがあればお聞かせください。 宮崎氏:本編を含めて色々印象に残る遊び方が多くあって非常に嬉しいです。一例で言えば、いわゆるノーダメージ攻略を結構楽しく見ているのですが、中でも「弾く硬雫(※)」をつかったノーダメ攻略がスゴイと思って楽しく見ていました。 ※弾く硬雫:使用すると一定時間、瞬間的なガードが強化されるアイテム ――圧倒的な完成度とボリュームを誇る「エルデンリング」に追加でDLCを用意するという試みにおいて最も苦労したポイントをお聞かせください。 宮崎氏:「エルデンリング」本編にあったコンセプト“冒険感”をDLCの中でどのように表現するのかが一番苦戦した点です。DLCとしてはかなり大きなボリュームのものになってしまったのですが、そのボリュームも冒険感を出すためとなっております。 ――本DLCは1本のゲームに相当するボリュームといっても過言ではないと思いますが、単独のゲームで販売しようという考えはあったのでしょうか? 宮崎氏:そういった考えはないです。もともとDLCとして開発していたものですし、先ほどお話しした通り「エルデンリング」らしい冒険感を出すためのボリュームでした。独立して遊べるという発想は今言われて初めて思いました。 ――本編の評価が高かったゆえに、DLCに対する期待値も高かったように思います。しかしその期待を超えることで、多くのユーザーが「影の地」の冒険を楽しめました。期待以上の満足度を提供できた秘訣はありますか?ユーザーに満足してもらうために意識したことがあれば教えてください。 宮崎氏:一番は先ほども触れたボリュームの部分です。冒険感のために必要なボリューム、あるいは未知の部分、探索の要素といったものをしっかり要するといったことが大きかったのだと思います。一方で、DLCにおいても反省すべき点が多くありますので、率直にそれを真摯に受け止めて次に活かしていこうかなと思っております。 ――DLCをリリースしたことで一区切りを迎えたように感じますが、「エルデンリング」として今後の展開はどのように考えていますか? 今後は「エルデンリング」のシリーズ化をしたいと考えているのか、新しいIPを考えているのかお聞かせください。 宮崎氏:現時点では「エルデンリング2」といった展開は考えていません。ただこれは「エルデンリング」というIPの展開を否定するようなことではありません。「だったら何をするのか」ということですが、フロム・ソフトウェアとしてはいつも通り複数のプロジェクトを走らせています。その中では色々なバリエーションのプロジェクトがありますので、ぜひご期待いただければと思います。 ――フロム・ソフトウェアが世界のゲームに与えた影響は計り知れません。今後のゲームへの期待など日々プレッシャーも多いと思うのですが、宮崎さんにとってリラックスする方法があれば教えていただけますでしょうか? 宮崎氏:リラックスする方法は人並みにあります。例えば家族と過ごしたり、アナログゲームを遊んだり、みたいなことですが、そもそもプレッシャーを感じる方ではないので、あまりリラックスしなきゃという強い意志にとらわれることはほとんどないです。 「ユーザーさんにご期待いただける状況がプレッシャーじゃないか」とご意見をいただくこともあるのですが、そうした状況はそもそもかなり貴重で得難い経験だと思っていますので、プレッシャーよりもまずありがたいという気持ちのほうが強いです。 ――DLCはマップの広さ、新武器、新戦技などボリュームの大きさが話題になりました。これは開発スタート時点でもともと想定したレベルだったのでしょうか? 宮崎氏:はい、開発スタートの時点で、「エルデンリング」らしい冒険感のためにはこれぐらいのボリュームが必要だろうということで、最初から計画されていたものです。 ――本編・DLCともに海外での人気がとても高いことが印象的です、海外ファンならでは見方や捉え方で面白かったものがあればお聞かせください。 宮崎氏:あまりユーザーさんの反応を見るときに、海外なのか国内なのか、ヨーロッパなのかアジアなのかなどを気にすることはほとんどありません。どの国の方々であれ、ゲームを楽しむという点はみんな同じなんだなと感じることが多いです。いち自称ゲーマーとしては、そのことがとても嬉しいですし、勇気づけらることが多いです。大袈裟な言い方をすると、私を含め、ゲーマーという人種なんだなというところに安心感を覚えます。 ――本編のマスターアップからDLCのリリースに至るまで、開発メンバーのモチベーションの源になっていたものがあればお聞かせください。 宮崎氏:開発メンバー個々にモチベーションを聞いて回っているわけではないので、あくまで想像になってしまうのですが、ゲームを遊んで楽しんでくださった方に感謝するという気持ちで作るというのが一番大きいモチベーションだと思います。 ――次回作はどういった作品になるか考えていらっしゃいますか?ファンタジー、SFなどのジャンルだけでもお聞かせいただけますと幸いです。 宮崎氏:答えられないです(笑)。複数のプロジェクトが走っていて、ジャンルも多彩です。その中には私のディレクションしているタイトルもあれば、私以外が担当するタイトルもあるので、そういった点でも色んな形で新しいフロム・ソフトウェアを見せていけると思いますので、ぜひご期待ください。 ――最後にユーザーの皆さまへのメッセージを一言お願いします。 宮崎氏:受賞させていただくことが多く、毎回おなじになってしまい申し訳ないのですが、本当に遊んでくださって支持していただいているユーザーさんには感謝しています。皆さんからすごく力をもらっていますし、我々自身の反省点も含め、ぜひもっと素晴らしい形で、皆さんにもっといいゲームを一生懸命作っていきますので、ぜひご期待いただければと思います。これが偽りなく本当の気持ちです。 (C)2024 Sony Interactive Entertainment Inc. (C)Bandai Namco Entertainment Inc. / (C)2024 FromSoftware, Inc.
GAME Watch,吹越友一