ドバイでオーダースーツは売れるのか、サウジアラビアに日本製品を売り込むには 銀座の高級スーツ企業の挑戦
◆コロナ禍、店を閉めても会社を動かして
――入社されて以降、先代と事業承継のプランについて話し合うことはあったのですか? 「承継は、私が40歳くらいになってからかな」くらいの話はしていました。 30代半ばくらいから徐々に話すようになり、タイミングを見て2019年、41歳のときに私が代表取締役に就任しました。 ――2019年というと、ちょうどコロナ禍直前ですね。 2019年11月だったので、中国で新型コロナウイルスが出始めた頃でした。 2020年4月には東京で緊急事態宣言が発出され、弊社も店を閉めました。 銀座テーラーはスーツを手縫いで仕立てる技術者を社員として雇用しています。 売上が立たないのは大変なことですが、職人が手を動かさないと腕が落ちてしまうということも大問題でした。 ――コロナ禍ではどのように会社を動かしたのでしょうか? 自分のビジョンや現在の会社の課題などにしっかりと向き合う時間ができ、頭をリセットする機会となりました。 社員には、販売員なら「営業への向き合い方」や「店が再開したらどんなことをしたいか」など、いくつか課題を出してレポートを提出させるようにしました。 職人たちに対しては、当時マスクが不足していたので、シルエットがとびきり綺麗でスーツのコーディネートにマッチするようなマスクを製作してもらい、「ビスポークマスク」としてオンラインで販売できるようにしました。 すると、メディアの取材が相次ぎ、たくさんの注文が入るようになりました。 売上は1カ月100万円ほどで、大きなものではありませんでしたが、コロナ禍で停滞していた会社に動きが出て、生き返ったように感じました。 会社の空気の流れが変わったんです。 常に活性化させ続けること、動き続けることが経営にも大切なのだと実感した出来事です。
■プロフィール
株式会社銀座テーラーグループ 代表取締役社長 小倉祥子 氏 1978年、東京都生まれ。青山学院女子短期大学家政学科を卒業。幼い頃から音楽に親しみ、1999年英国王立音楽大学にピアノ留学。一度帰国したのち、マーケティングを学ぶためにアメリカの大学に2年半留学、2007年に帰国。2008年、家業である銀座テーラーに入社。社長室室長、専務取締役などを経て、2019年に代表取締役に就任。