「地方から夢実現へ」まい進

「地方を理由に夢や目標を諦めたくないし、諦めてほしくない」と話す摩嶋一整さん＝周南市住吉町

　周南市で会社員として働きながらトップ選手として活躍する格闘家がいる。同市の毛利道場（毛利昭彦代表）所属の摩嶋一整さん（32）。7月下旬にはさいたまスーパーアリーナで約4万8千人を集めた人気格闘技イベント「超RIZIN．3」の第1試合に出場し、見事一本勝ち。保育園に通う2児の父親でもあり、「自分の子どもを含めた、これからの世代に地方にいても夢や目標を追い実現できることを示していきたい」と、二足のわらじを履くハードな日々を送る。 　今大会は危なげない試合展開で、得意の絞め技で鮮やかに勝利。試合後のマイクでは周囲への感謝を述べるとともに「また明日帰ったら仕事なので今日はこの辺で」と締めくくった。大舞台で活躍する傍ら地道に働く姿に、会社勤めの格闘技ファンらから「サラリーマンの星」と熱烈に支持される。 　関係者からは「格闘技に専念すればさらに強くなる」との声があり、自身も世界に挑むことや拠点を東京に移すことを考えた時期もあるが、家庭を持ち子どもが生まれてから気持ちに変化が。「格闘技はけががつきものでいつ現役が終わるのか分からない面がある。長い人生の中で今できることに精いっぱい取り組みたい」と、山口県での生活を軸に据える。 　出勤前に子どもを保育園に送り、退社後、迎えに行って子どもの世話をしてから夜、練習に通うのが日常。練習回数は毛利道場などに週4回程度でプロ選手の中では少ないが、「今の環境の中で頑張るしかない」と力を込める。勤務先の会社も今大会からスポンサーに名を連ね、「会社挙げて応援してくれ、期待に応えたい」と話す。これまで苦労してきた減量もプロの助言を受けるようになり、今は仕事と両立しながら「RIZINのチャンピオンベルトを山口県に持って帰ることが目標」だ。 　3歳で柔道を始め、南陽工業高校時代に全国大会出場経験も。高校卒業後、現在勤めるプラントメンテナンス会社に入社。20歳の頃、友人とダイエット目的の軽い気持ちで実家近くの毛利道場に入門し、1年後の2013年にプロ格闘家としてデビュー。「試合に出るつもりで入ったわけでもない自分を強くしてもらった」と感謝する。 　15年の修斗ライト級新人王獲得以降、数々の戦歴を誇り、20年にRIZINに初参戦しクレベル・コイケ、斎藤裕、金原正徳ら名だたる選手と対戦。RIZINでの成績は7戦3勝。「誰が相手であろうと一つ一つ勝っていく」。闘う姿を見せ続けることで県内で格闘技への関心が高まり、「『地方』を理由に諦めたくない、諦めないでほしい」とのメッセージが届くことを願っている。