医者の腕が悪いと、膀胱に穴を開けられる「大惨事」も…前立腺「本当に信頼できる名医」の実名
放射線治療よりもパワフル
新たな治療法が次々と生まれ、「スタンダード」が塗り替えられているのは前立腺がんでも同じだ。手術のやり方ひとつとっても、大きな変化が起こっている。 前立腺がんは転移するリスクがあるため、前立腺を全摘するのが基本的な治療方針だ。このような局所にとどまっているがんを切除するならば、「ダヴィンチ」などの手術ロボットを利用するのは、もはや「常識」と言っても過言ではない。 「技術の発展にともなって、ロボット手術もかなり低侵襲になってきています。かつては1500ccほど出血していたケースでも、最近では100cc程度で済むことがほとんどですね」(前出の高橋氏) 放射線治療の分野では、ほかのがん治療とは違った手法が臨床現場に取り入れられている。 「その一つが、放射線を発するチップを前立腺に埋め込んで、内側からがん細胞を叩く小線源治療です。手術よりも体への負担が軽いうえ、3泊4日の入院で済む手軽さが魅力でしょう。 また外から放射線を照射する際には、強度変調放射線治療というやり方が広がってきています。コンピュータでコントロールしながら放射線を一ヵ所に集中して照射する方法で、患部が局所に限られる前立腺がんとは相性がいい」(高橋氏) さらに最近では、より強力な治療法を実践する病院も増えている。 「粒子を高速でがんに照射する粒子線治療です。放射線よりも照射範囲を絞ってがん細胞をピンポイントで叩くことができるため、より高い治療効果が期待できます」(前出の井手氏) 粒子線治療の中でも、水素の原子核を光速の70%程度まで加速させて照射する陽子線治療と、水素より質量が大きくてエネルギーも強い炭素の原子核を用いる重粒子線治療は、2018年から前立腺がんに対して保険適用になった。治療時間も短く、通院が2週間ほどで終わるのは大きなメリットと言えるだろう。
病院選びを間違えて悲劇
前立腺肥大症や前立腺がんの治療法は、このとおり目覚ましいほどの発展を遂げている。しかし最新治療を受けるにしても、肝心な医師の腕がよくなければ元も子もない。都内の大学病院に勤める泌尿器科医が、「ここだけの話」と前置きしたうえで明かす。 「前立腺がんのロボット手術はできても、HoLEPのように高い技術が必要な手技を身につけられない医師は意外と多い。うちの教授なんてろくに練習もせず、『HoLEPは誰にでもマスターできるものではないから……』と最初からあきらめています。 また泌尿器科医は腫瘍を専門とする人が大半で、肥大症治療の技術をきちんと磨こうという医師は限られている。たとえばHoLEPでは、くり抜いた前立腺を細かく砕いて尿道から排出しますが、その際に膀胱に穴を開けてしまったケースもあるそうです」 悲惨な事態になってから後悔しないためにも、本当にいい病院と名医を見極めたうえで受診すべきだろう。前出の井手氏が推薦するのは、uMIST東京代官山だ。 「前立腺肥大の治療に強いクリニックで、院長の斎藤恵介氏はHoLEPなど低侵襲の治療法にとても前向きです。また自由診療ではあるものの、排尿トラブルを改善できる磁気治療など、新しい手法も積極的に取り入れています」 同じく長久保病院の桑原勝孝氏や渕野辺総合病院の設楽敏也氏は、肥大症のレーザー手術の症例数が非常に多く、技術も信頼できる。 また前立腺がんの治療では、国立がん研究センター東病院の評価が高い。とくに泌尿器・後腹膜腫瘍科長の増田均氏はロボット手術の経験が豊富なうえ、陽子線治療を実施している数少ない病院の一つでもある。 西に目を向けると、奈良県立医科大学附属病院が頭一つ抜きん出ている。関西圏では圧倒的な前立腺がんの治療数を誇り、ロボット手術の実施数も首都圏の大病院と遜色ない水準だ。 古い常識にとらわれて、前立腺の病気を放置しておくのは非常にもったいない。名医のもとで正しく治療すれば、よりよい暮らしが待っている。 「週刊現代」2024年4月27日・5月4日合併号より さらに関連記事『1日10回トイレに行く、尿漏れパッドなしでは外出できない…男性を悩ませる「前立腺トラブル」の深刻な実態』では、ほかにもさまざまな治療法について紹介している。
週刊現代(講談社)