パリで「金」のカギは3点シュート バスケ女子元日本代表の矢野良子さんが後輩にエール
パリ五輪開幕まで26日で1カ月となった。2021年夏の東京五輪で銀メダルに輝いたバスケットボール女子の日本は、今夏の大舞台で世界の頂点に挑む。元日本代表で2004年アテネ五輪に出場した矢野良子さん(45)=トヨタ自動車=は、小柄な日本が世界で勝ち抜くカギとして、3点シュートの精度を挙げた。また、自らの苦い経験を交えて4年に1度しかめぐってこない五輪の重みを指摘し、後輩たちがそれぞれに貴重な時間を持ち帰り、力をつけていく糧にしてほしい、とエールを送った。 【写真】2004年アテネ五輪でプレーする矢野良子さん ■5人全員が打てる 矢野さんは、待ち合わせた場所に笑顔を浮かべ、軽やかな足取りで現れた。 金メダルのカギは? 単刀直入に聞いてみた。「難しいなぁ…」。しばし考え「外角から打つ3点シュートの確率をいかに上げていくか」と続けた。日本は多くの相手に身長で劣る。矢野さんの現役時代から「(相手に)2点取られたら、外から3点返せばいい」との考え方が、脈々と受け継がれてきた。 現在と当時の日本代表では3点シュートを打てる人数が違うという。名手だった矢野さんは「いまは(コートの)5人全員が狙えるし高確率で決められる。日本の大きな武器」と分析し、「昔は5人全員は打てなかった」と振り返った。 東京五輪では、トム・ホーバス監督(現日本男子代表監督)が「金メダル」を目標に掲げ、3点シュートを積極的に狙う戦術を前面に押し出した。選手たちは視界が開けたら放つ姿勢を貫いた。矢野さんは「継続してほしい」と願った。 ■4年に1度の重み アテネ五輪では、いまでも脳裏から離れない苦い経験をした。1次リーグのギリシャ戦は勝てば決勝トーナメントに残る大一番だった。終盤までもつれ、逆転を狙った最後のプレーで矢野さんは3点シュートを外した。ここで引退する選手もいた。矢野さんは視線を落とし、つぶやいた。「メンタル、崩壊しました」 その後、矢野さんは長く現役生活を続けた。「4年に1回めぐってくる、その舞台でしか取り戻せないものってきっとある」。強い思いが胸にあった。 08年北京、12年ロンドン両五輪は世界最終予選で敗れた。3大会ぶりに日本が出場した16年リオデジャネイロ五輪は若手への切り替えでメンバーから外れた。3人制に転向して目指した東京五輪も出場は叶わなかった。21年末に現役を引退した。アテネから17年以上の月日が流れていた。「もう一度、五輪に出るまでやめられないと思って、走り続けた」と絞りだした言葉には、五輪の魅力と重みが凝縮されていた。