【バレー】世界クラブ選手権サンバーズ奮闘記1
銅メダル獲得の舞台裏
2023年のアジアクラブ選手権を制していたサントリーは昨年末の天皇杯・皇后杯ファイナルラウンドの出場を辞退、同時期に開催されていた世界クラブ選手権(インド)に挑み、日本初の銅メダル獲得という快挙を達成した。戦いの模様や背景を、全4回シリーズでお届けする 【写真】3位決定戦に臨む選手たち 「あれ? 硬かったんじゃないの?」 劣勢の場面でコートに入ったサントリーのセッター西田寛基は面食らった。 12月10日までインド・バンガロールで開催された「FIVB世界クラブ男子選手権大会2023」の3位決定戦。第1セット、アジア王者サントリーサンバーズは、ヨーロッパ代表のハルクバンク スポーツクラブ(トルコ)に大差をつけられていた。 ふだんはないようなミスが続出する様子を、西田はコートの外からやきもきしながら見ていた。 「準決勝でみんな、絶対勝つんだという強い気持ちを持って戦ったけど、フルセットで敗れる悔しい結果になった。3位決定戦のときは試合前からみんなの顔が硬く見えて、ベンチメンバーのみんなと『硬いよね。大丈夫かな?』という話をしていたんです。試合が始まると、『やっぱり昨日の敗戦から切り替えられていないのかな』という印象でした」 10-16の場面で、正セッターの大宅真樹が一旦リセットするためベンチに下がり、西田がコートに入った。リリーフサーバーとしては出場していたが、セッターとしてコートに入るのは今季初めてだ。 「ここで、今シーズン初か」 心臓がバクバクと高鳴る。その緊張を周りに悟られないように隠し、雰囲気を変えてやると意気込んでコートに入ったが…。 「コートの中にいる皆さんが、なぜか笑って迎えてくれたので、『あれ? 硬かったんじゃないの?』って(苦笑) 逆に僕が励まされた感じでした。『お前楽しめよ』と言ってくださって。『いや、俺のセリフやろ』と思った部分もありましたけど(笑) 皆さんがすごく温かくコートの中に迎えてくれたので、気持ちよくプレーできたのかなと思います」 コートの中にいたリベロの藤中颯志は、その時の状況をこうとらえていた。 「本当にかみ合わない感じはありました。コンビもそうだし、ちょっとしたボールが落ちたりして。ただ、他の選手がどう思っていたかはわからないですけど、自分としてはあまり焦ってはいなくて、『大丈夫か?』という不安もなかった。このセットを取られるのはしようがないけど、流れは渡さないように、と考えていました。相手が格上という気持ちもあったので、『うまくはまらなければこんな感じか』と、謙ちゃん(兄の藤中謙也)とも話していました。それは別にあきらめていた会話じゃなくて、リラックスしたいい状態だったと思います」 そうした状態でいられたのは、大会を通して得ていた自信があったからだ。 「予選の結果もあって、『いける』という気持ちがあったし、十分手が届く距離にいる相手だと思っていました」 (第2回に続く) 写真/©SUNTORY SUNBIRDS 記事提供/SUNTORY SUNBIRDS・米虫紀子 ◇サントリー試合結果 3位決定戦 12月10日(日) ○サントリー 3(17-25、23-25、25-21、25-19、15-12)2 ハルクバンク● 準決勝 12月9日(土) ●サントリー 2(25-22、22-25、30-28、20-25、15-17)3 ミナス○ 予選2日目 12月7日(木) ●サントリー 2(21-25、29-31、30-28、25-22、12-15)3 サダ クルゼイロ○ 予選1日目 12月6日(水) ○サントリー 3(25-23、25-23、25-16)0 ハルクバンク● ■最終順位 優勝 ペルージャ(イタリア) 準優勝 ミナス(ブラジル) 3位 サントリーサンバーズ(日本) 4位 ハルクバンク(トルコ) 5位 サダ クルゼイロ(ブラジル) 6位 アーメダバード(インド)