現代の“上納システム”に通じるしきたりも…“平安”じゃなかった『光る君へ』の時代
武士の戦乱ばかりが大河ドラマの華ではないはずーー2024年の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合で毎週日曜日よる8時放送)で脚本を担当する大石静の意図に大賛成だ。 過去にも平安時代を題材にした作品はあるが、純粋に武士が登場しない大河ドラマとしては、1963年の第1弾作品『花の生涯』以来、今回が初めての試みかもしれない。戦乱よりもっと優雅な栄華を平安時代に見出すことは容易に思われるが、一方で、そんなに簡単な話でもなさそうなのだけれど……。 「イケメンと映画」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、現代人も自戒を込めて学ぶべきことが多い、藤原氏による壮大なフィクションを読み解く。
全然平安じゃない平安時代?
『鎌倉殿の13人』(2022年)の鎌倉時代、『どうする家康』(2023年)の戦国時代……NHK大河ドラマの題材となるのは、戦乱を勝ち抜く武士社会が圧倒的に多い。気骨あるドラマ性は面白いけど、ちょっと疲れてもしまう。そろそろ箸休め的なブレイクタイムをはさみたいなと思っていた、そんな折。 松山ケンイチ主演『平清盛』(2012年)以来、実に12年ぶりに、今年は平安時代。これなら放送期間の通年、絶えずまったりとドラマを楽しめるのでは。と、期待するのも束の間。実は平安時代こそ、最も油断ならないくせ者な時代なのだった。 確かに大規模な騒乱はなかったけれど、「平らかで安らかなれ」という意味である割には、全然平安なんかじゃなかった(のかもしれない)。後々のことを考えると、単に平安だったんだなとはどうしても思えないのだ。 平安時代後期、貴族たちの政治争い(政争)の代理戦争として次第に実力を持つようになるのが武士である。頭角を現し、直接的な武力が現勢化する。『平清盛』はまさにその代表格である平氏台頭を描いた。武士による戦乱の長い時代を準備した原因が、すくなくともこの平安時代にこそあるんじゃないか。となると、あぁ今年も戦乱ドラマが続くの!?