候補者は何にカネを使った?抜け穴が多い「選挙運動費用収支報告書」、閲覧にはハードル
民間によるデータベース運用開始
10月、こうした課題の解決に向け、報告書を全国から収集したデータベースの運用が始まった。手掛けるのは、日本大の安野修右(やすの・のぶすけ)研究室、オンラインメディア「スローニュース」、調査報道グループ「フロントラインプレス」の3者。既に2021年衆院選候補者らの1000以上の報告書を収集済みで、登録したジャーナリストや研究者ならウェブ上で閲覧できる。横断検索も可能だ。 報告書の集約で何が見えるのか。選挙制度が専門の安野専任講師は「近年の選挙は、地方の政党基盤の弱体化やSNS(ネット交流サービス)の普及に伴い、従来型といえる政党主導や地元をくまなく回る『どぶ板型』から、マーケティングを駆使するプロのコンサルタントに依存する傾向が強まっている」と指摘。「全国の報告書を横断的かつ時系列で分析すれば、選挙という民主主義制度の根底で生じている重要な変化が可視化できるかもしれない」と話す。
専門家「調査報道につなげて」
一方、フロントラインプレス代表の高田昌幸・東京都市大教授は、報告書のデータベースを使った調査報道に期待を寄せる。選挙運動費用の一部が公費でまかなわれているのに制度に抜け穴が多いためだ。「選挙で使い切れなかった余剰金の取り扱いルールがないため、候補者が懐に入れることも可能になっている。新たな報道でこうした問題を明らかにし、制度改正につなげてほしい」 今回の衆院選後も都道府県選管で報告書が公表される。閲覧は誰でも可能で無料なので、地元で気になる候補者がいれば選管に足を運ぶことをお勧めしたい。新しい発見があるかもしれないし、なにより、チェックする目が増えることが、政治に緊張感をもたらすことになる。【大場弘行】
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。