先進的な脳神経血管治療 信大医学部独自の技術 手からカテーテル挿入 長野県松本市
信州大学医学部(長野県松本市旭3)の脳神経外科学教室が、手の親指の付け根から血管にカテーテル(管)を入れる方法で、世界でも先進的な脳神経血管内治療に取り組んでいる。先端がJ字形のカテーテルを使い、独自の技術で脳梗塞や脳動脈瘤などに対応する仕組みを編み出した。手術に伴うリスクが軽減され、患者の負担も小さくて済むのが大きな利点となっている。 脳神経血管内治療はかつて開頭手術が主流だったが、カテーテルの活用が進み、直線的で脳まで到達しやすい、足の付け根の動脈からカテーテルを入れるようになった。しかし、大出血や合併症の可能性、止血のために長時間安静にする必要があるなど、患者の苦痛が伴った。 患者の負担軽減を模索する中で、手の親指の付け根から挿入する方法を8年前から研究。カテーテルが手から脳に達するには急角度で向きを変える必要があり、血管の構造上、足からの方法に比べて難しい。当時、信大医学部付属病院脳血管内治療センター長だった小山淳一さんと、助教だった花岡吉亀准教授(44)が試行錯誤を重ねた。 親指の付け根から真っすぐに伸びた状態で進んだカテーテルは大動脈に到達すると、付近の血管の形を利用してJ字形の形状を再構築する。こうして、カテーテルが脳に向かいやすいルートを確保する方法を発見した。これまでの治療は、信大病院と関連施設で計約1000例に及ぶ。 手首付近の血管は直径1・5ミリ~2ミリ、脳の血管は2ミリ~4ミリ。脳内で使うカテーテルは直径0・5ミリほどで細やかな技術が求められる。今後は、より細いカテーテルを使った治療の研究や簡便な方法を探る。花岡准教授は「『患者第一』を突き詰めた結果、技術を考案することができた。信大発の成果を知ってもらえれば」と話している。
市民タイムス