自動運転が描く未来の地域医療 湘南アイパーク、大学・商社と共同研究 街づくりの一翼に 神奈川発 医療革命(上)
■市民も開発の一員
アイパークインスティチュートは10月3日、ヘルスケア分野から社会の変革を促す取り組みを加速させるため、三菱商事、徳洲会湘南鎌倉総合病院、横浜国立大とともに「新湘南ウェルビーイング協議会」を設立した。
横浜国大の学長補佐を務める同大学院工学研究院の下野誠通准教授は「社会実装のゴールは、市民一人ひとりに優れた技術を使ってもらうこと。いまは市民の方にも開発に片足を突っ込んでいただき、新たなチャレンジのチームメンバーとして一緒にやっていただいている」と語る。
同大は4、7月、地域住民参加の「てくてくてっく」という取り組みを実施した。歩くことで健康を見直し、街の防災上の課題がないかチェックすることが目的だが、同時に同大の学生も参加し、街づくりの一翼を担う試みでもある。
■世界のモデルケースに
日本の創薬は世界のトップ企業との間には分厚い壁がある。桁違いの資金力で研究に投資し、人工知能(AI)など最先端技術までも駆使する米国などのトップ企業との差は広がっているのが現実だ。
新たな医療と健康の仕組みを備えた街づくりによって、その差は縮められないか。曽我マネージャーは「インドネシアも、ベトナムも高齢化の波がくる。いずれも都市化で交通渋滞という大変な課題も抱えており、この新しい取り組みは世界の課題解消のモデルケースになる」とした上で、こう強調する。
「新たな診療システムを備えた街ごと輸出するようなイメージもある。欧米と闘える日本の強みになる」
令和14年には近くにJR東海道線の「村岡新駅」も開業する予定だ。下野准教授は「新駅ができて、この地域に人が住んだとき、われわれの実証実験の成果が形になって、街に埋め込まれているといいと夢描いている」と話した。(大谷卓、高木克聡)
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湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)
平成30年、藤沢市にあった武田薬品工業の研究所を外部に開放して設立された研究開発拠点。「核心的なアイデアを社会実装する」を理念に掲げ、「世界に開かれたライフサイエンスエコシステムの構築」を使命とする、製薬や次世代医療などを牽引する企業や団体など約130社が入居している。