政策株ゼロへ売却加速、「1社ずつ対話」-東京海上日動の城田新社長
(ブルームバーグ): 東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険は、政策保有株をゼロにするため売却ペースを加速させる。保有する銘柄数は上場株式だけで約1000社あり、個別に売却方針を説明する。売却で得た資金は成長投資に振り向ける。
1日付で就任した城田宏明社長がブルームバーグとのインタビューで述べた。昨年5月に2026年度までの4年間で6000億円以上の政策保有株の売却方針を掲げたが、「これまでの延長線上にはない規模感になる」として、売却ペースをより速める考えを示した。ゼロとする目標時期については「今まさに議論中」として、5月に発表予定の新中期経営計画において示す方針だ。
東京海上日動を含めた大手損保4社は昨年末、企業向け共同保険料の事前調整問題で金融庁から行政処分を受けた。同庁は政策保有株の存在が適正な競争をゆがめた一因として売却加速を迫った。昨年3月末時点で東京海上日動が保有する上場政策保有株は2兆4000億円超。損保4社の中で最も大きく、現段階では唯一ゼロにする目標時期を示していない。
城田氏は「長年の関係があるので、丁寧な対応に非常にこだわっている」と説明。相手先企業からは株価への影響などを不安視する声があるといい、売却に際しては「1社ずつ対話している」と語った。
保険料調整のような事態を二度と起こすことがないよう再発防止に努め、信頼回復に向けて「既存のビジネスモデルを全面的に見直す」と強調。また、自然災害の激甚化など保険を取り巻く環境が大きく変わる中、変化を先取りしていく必要があるとも述べた。
2024年度からの新中期経営計画では、サイバーや中小企業支援、GX(グリーントランスフォーメーション)、ヘルスケアといった新分野での保険に加え、「レジリエンス(回復力)」を社会課題重点分野として注力する。将来の新たな収益の柱として、保険だけにとどまらず広く顧客の課題解決を目指すソリューション事業に取り組む。政策保有株の売却益はこういった成長投資に振り向ける。