【黒柳徹子インタビュー】いくつになっても“変身する”って楽しい!
黒柳徹子さんの美しさの極意は、「求められることに応えていく」、とびきりの柔軟さと涼やかさだった。今、涼やかに生きるために話しておきたいこと。 〈インタビューショット〉ずいぶん前、アメリカで買ったグリーンのドレスを着ている黒柳さん
30代以降、人の見場(みば)を美しくするのは「知性」
今日着ているグリーンのドレスは、ずいぶん前に私がアメリカに旅行したときに買ったものです。多分、元々はあちらの15歳ぐらいの女の子が着るような、いわゆる子供服だと思うんですけど、古着屋さんか何かに立ち寄ったときに、「まぁ、素敵!」って一目見て気に入って。そういう服が家の倉庫に山盛りになっているんですが、最近は、スタイリストのみっちゃんが今の私に似合うようにリメイクしてくれるので、着物なんかも、ずいぶんモダンな形に生まれ変わっています。 撮影で楽しいのは、いくつになっても「変身」できることです。ヘアメイクと衣装を変えるだけで気持ちまで変化するのですから、女優をしているときなんかはつくづく「見場って大事だなぁ」なんて思います。 私は自分の肩書を聞かれたら、“女優”と“ユニセフ親善大使”と答えています。「徹子の部屋」が始まってから、視聴者の皆さんを混乱させないように、女優の仕事は舞台だけにしようと決めたので、今は、年に一本の舞台がライフワークです。でも、そんな私でも、30代のときは、「女優」を名乗ることに引け目を感じていました。 仕事は順調でしたが、劇団出身の俳優さんたちの芝居を見ていると、「私には基礎がない」と落ち込むことなんてしょっちゅう。私が「うまいな」と思う人のお芝居を観察していると、その人たちはみんな劇団出身だったので、杉村春子先生にお願いして、研究生として文学座に通ったこともあります。 杉村先生は、とても美意識の高い方でした。畳の上で私が相手役の人に体を向けて話すと、「舞台空間のどこを切り取られてもきれいに見えるように、ちゃんと体は正面に向けて。じゃないと、せっかくの見せ場が勿体ない」と注意されました。でも、私は「不自然だな」と思うことはやりたくなかったので、体を正面に向けないで台詞を言ったことも何度かあります。そんなことがあって以来、「お芝居は、何がいちばん正しいとは断言できないものなんだ」と思いました。もしかしたら、人生もそうなのかもしれないな、なんて。