『虎に翼』仲間たちが開いた寅子の“心躍る結婚式” 細かいシーンに溢れる懐かしさ
直明(三山凌輝)に呼び出され、甘味処「竹もと」を訪れた寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)。襖の奥に姿を見せたのは、法服姿の梅子(平岩紙)、轟(戸塚純貴)、よね(土居志央梨)、涼子(桜井ユキ)、玉(羽瀬川なぎ)、香子(ハ・ヨンス)、さらに久保田(小林涼子)、中山(安藤輪子)といった明律大学時代の旧友たち。『虎に翼』(NHK総合)第105話では、直明プロデュースによる寅子と航一の心躍る結婚式、そして再会を祝した明律大学の同窓会が開かれる。 【写真】法服を着た明律大学の仲間が大集結の感涙ショット 結婚式は、久保田の「主文。私たちは申立人の夫婦それぞれの姓での婚姻関係を認める」に始まり、中山の「理由。民法において夫婦はどちらかの氏を名乗ると決められてはいるが……」に続いて順に理由が述べられていき、最後に轟が「我々の主張には法的効力はないが、これを2人への結婚の祝いの言葉とする」と締められる裁判に見立てた結婚式。「心躍る結婚式をありがとう」と寅子は涙が止まらない。 汐見香子として日本で生きることを決めた香淑の「名前を変えることで自分が失われると感じる人もいる。夫婦のどちらかがそれを負うのは平等とは言えないのではないか」、家族でいることを放棄した梅子の「同じ姓を名乗ることが、夫婦や家族であることの証しにはならないと考える人もいる」とそれぞれの人生と少なからずリンクするところも感じられる。 直明と航一が席を外し行われた同窓会では、思い出話に花が咲く。直明が涼子に手紙を出したのをきっかけにして、みんなで連絡を取り合い実現した結婚式だったこと。かつての法廷劇をリバイバルした「新説・毒饅頭殺人事件」をやろうという案も持ち上がっていたこと。現在、中山は検事を、久保田は鳥取で弁護士を続けていること。 香子の「やっぱりこうなりました。あの頃のなりたい自分とは違うかもしれないけれど。でも私たち最後にはいい方に流れます」というセリフが、それぞれの人生を物語っているように思う。大切な人、立場、名前、家族、身体の自由、同性への特別な感情。失い、手放したものもあれど、今はそれぞれが自分の思う最上の幸せを手にして、心の底から笑い合っている。人間なんて今振り返ってみればの連続だが、こうして心から幸せだと思える時を寅子たちは自分の手で掴んだのだ。尾野真千子の語りに賛同して、筆者からも「おめでとう」の言葉を送りたい。 「今度は綺麗な青い海に」と未来の約束をした寅子。思い浮かぶのは、寅子が優未(毎田暖乃)と航一と一緒にはしゃいだ新潟の海だ。その時は「喫茶燈台 新潟支店」こと涼子と玉が経営する「ライトハウス」にも立ち寄るだろう。よねのハヤシライスの感想も聞いてみたい。(小橋(名村辰)、稲垣(松川尚瑠輝)の存在も忘れないであげてほしいが) 細かいシーンにはなるが、轟が梅子に対して「事務所のこと、和菓子の修業に日々とても頑張ってるぞ」と称えるところで、横に座る香子がさりげなく梅子の背中をさすっている。その姿を見て、第15話で猪爪家で再検証された法廷劇「毒饅頭殺人事件」のシーンの終わりに、よねの背中をさする香子の姿を思い出した。乾杯のシーンでグイッとビールを飲み干すよねも、その人となりが表れているが、何気ない仕草にまたあの頃の面々が集まったのだと懐かしさを覚えた。 時は流れて、昭和31年の春。寅子と優未が星家へと引っ越す時がきた。優未を心配する直治(今井悠貴)、道男(和田庵)に、「ご心配なく。私、何にも不安はないの。だって航一さんはお母さんと優未が大好きなんだもん。絶対、味方でいてくれるよ」と笑顔を見せる(成長を感じさせる毎田暖乃の演技が凄まじい)。だが、一方で星家で待つ朋一(井上祐貴)、のどか(尾碕真花)には笑みはない。その溝を埋めるのは、まさかの麻雀になるようだ。
渡辺彰浩