モーリス・ベジャールに愛された日本人ダンサー、小林十市 バレエ団率い9月来日公演
仏映画「愛と哀しみのボレロ」(1981年、クロード・ルルーシュ監督)に登場するバレエ「ボレロ」の創作で知られる世界的振付家、モーリス・ベジャール(1927~2007年)が創設した「モーリス・ベジャール・バレエ団」(BBL)が今年9月、3年ぶりに19度目の来日公演を行う。ベジャールに愛された日本人ダンサー、小林十市(55)が現在、同バレエ団のバレエ・マスターを務めている。 小林が母親の勧めでバレエを始めたのは、10歳のとき。祖父は落語家で、範士七段の剣道家としても知られた柳家小さん(1915~2002年)だ。 「祖父の影響で小さい頃から剣道をやっていたので、もともと体を動かすのは好きだった。何かバレエのテクニックを習得できたときの体の感覚的なものが気に入り、楽しんでやっていた」 バレエを始めて数年後に出場した英国のロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)のコンクールで最優秀賞やアデリンジェニー賞を受賞。RADの夏期講習にも参加した。 「練習をしてコンクールで結果を出すというプロセス的なものを十代の若いなりに経験し、自分が海外でどれだけ通用するのかを何となく感覚で捉えていたようだ。中学3年のときに高校へ進学するかどうかを考えた末、『バレエでやっていこう』と決めた」 「だったら、留学しなさい」。母親の言葉に従い、米国の名門ニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)の付属学校、スクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)に3年間留学した。 SABを終えた後、米国の3つの名門バレエ団のオーディションを受け、いずれも最後まで残ったが、ワーキングビザを取得できず入団を断念。ベジャールに気に入られ、20歳のときにBBLに入団した。 「米国留学中は、日本人ということで他のダンサーとのスタイルの差や自分の踊りに対して悩んでいた。しかしBBLにはいろいろな国籍の人がいて、劣等感を感じたことはなかった。逆に日本人である自分をどう生かすか。いかに自分の個性を引き立たせられるかということにシフトしていった」 BBLには前身のバレエ団を含め、日本人ダンサーも複数所属していた。「今思うと、恐らくベジャールさんに一番振り付けをしてもらった日本人は、自分ではないか。ネコの役も3回やった」