上海自由貿易試験区進出のメリットは? 東短リサーチ加藤出社長に聞く
2013年9月、中国政府は上海に上海自由貿易試験区を始動させました。まだ日本企業の進出は30社程度とみられていますが、この試験区にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 今月8日に「東短ビジネス情報コンサルティング(上海)有限公司」を上海に設立し、董事長(日本でいう取締役会長に相当)に就任した東短リサーチの加藤出社長に話をうかがいました。 ── 上海自由貿易試験区が作られた背景を教えてください 2013年11月の三中全会で習金平体制が打ち出した包括的な改革案は、中国ウォッチャーの間では、サプライズで迎えられました。これが実現されるならWTO加盟に匹敵する経済効果があります。中国経済が大きくなる過程でいろいろなしがらみができてきましたが、上海自由貿易試験区は、李克強首相の指示で既得権益に風穴を開ける狙いがあります。中国政府が改革を実行できるのかどうかを見極めるためのある種の試金石と言えます。 ── これまでにも深セン経済特区など特別区がありましたが、何が違うのでしょうか? 習近平国家主席、李克強首相らによる肝いりの政策だけに、トップの熱意が違います。名前は「上海」ですが、中国経済に影響を与えるポテンシャルがあります。これまでは通常、中国国内に会社を作るろうとしても、数年かかることは珍しくありませんでした。そもそも役人にも会えないということもありました。しかし、試験区ではネガティブリストに記載された業種でなければすぐに会社を設立できます。今回私達が設立した会社を例にとっても、わずか2か月で設立できたという速さです。外資規制による資本金のしばりもなく、外国資本100%出資でも会社が設立できるなど画期的です。 ── 試験区に対する日本企業の反応はどうでしょうか? 試験区には、全体では7000社を超えていますが、従来の上海保税区にオフイスを持っていた企業を除けば日本からは現在30社程度しか進出していないようです。日本企業は決して多くはありません。日本国内では人口減少で内需が縮んで行く恐れがあります。外交など付き合いが難しい面は確かにありますが、中国経済の規模は2010年に日本を抜き、IMF予想では今年早くも日本の2倍になります。13億人もいて地域的にも所得階層的にも多様性が非常にある消費市場ですから、マクロ経済が今後中成長になっても伸びていくニッチ市場は多々あると思われます 日本企業はある程度枠組みが決まってから進出することが多いのですが、新興国ビジネスではそれでは遅く、その間にも外国勢が先行者利益を持っていきます。中国の開放政策に関心があるもののまだ事務所は持っていない、あるいは、今後、規制緩和が見込まれる業種において、東短グループが培ってきたノウハウや情報収集力を活用して、日本企業の進出を私たちがお手伝いできればと思っています。