WBSS決勝の井上尚弥vsドネアは「サムライの斬り合いのように一瞬で決まる」
ドネアは、試合のイメージを「2人のサムライの斬り合いと一緒だ」と言った。 互いの一撃で一瞬にして決着のつく可能性を示唆した。 「彼もパワー、僕もパワーがある。先にミスをしたほうが負けに近づく。早い決着も、長い決着もどっちに転ぶか、お互いの戦術で違う。ただお互いが頭脳派だから、頭脳戦になれば長くなるかも」 井上尚弥は、バンタム級に転向後の、ここ3試合、すべて2ラウンド以内に衝撃的な内容で決着をつけている。ドネアからすれば、ディフェンスのミスがあれば、そこで終わるという“恐怖”がつきまとう。 それでも武士道精神がドネアの根本にある。 日本のアニメ、漫画文化に感化され、「ドラゴンボールZ、ナルト、ワンピース、スラムダンク、はじめの一歩」と、楽しそうに好きだったアニメを羅列したドネアは「映画も好きだった。宮本武蔵に三船敏郎の七人の侍も見た」という。 「武士道精神の忠誠心、敬意、尊厳が自分に取り込まれてきた」 一方の井上尚弥も海外メディアにサムライ・スピリットを持ったボクサーとして紹介されている。2人のサムライの激突――。 なるほど絵になる。 奇しくも“参謀”の真吾トレーナーも同じく「ミスをした方が負ける」と言った。 井上尚弥も何がポイントかをわかっている。 「ひとつ言えるのは左フックに気をつける。その(当たる)距離にいない。それだけ」 互いにミスのできない100%の戦いを求められたとき優位になるのは、ポテンシャルと引き出しの幅だろう。36歳のドネアは、もはや全盛期を過ぎているが、バンタム級では負けたことがない。 「(ひとつ上の)フェザー級でやってきたことがこの前の試合でも生きている」 そしてキャリアという武器がある。 「2つの側面がある。経験と共に若さもアドバンテージとも言えるだろう。ものは考えよう、どういう展開にするかで変わる」 井上尚弥のステップバックの速さと反応、察知力、そしてバンタム級に上げて飛躍的に進化したスピードとパワーを考えると、ドネアの左フックを被弾して彼が負ける姿はとてもじゃないが想像できない。 ヒリヒリする早期決着になることは間違いないだろう。 さらに井上尚弥には負けられない興行になる。 血のにじむようなボクシング人生を共に歩んできた弟・拓真とのダブル世界戦が決まったのだ。