奈緒がミドリ髪の主人公で新境地 『東京サラダボウル』は他者を思いやるきっかけの一作に
奈緒と松田龍平がダブル主演を務めるドラマ10『東京サラダボウル』(NHK総合)が、1月7日よりスタートする。 【写真】ド派手なミドリ髪も似合う奈緒 第1話のタイトルは「サソリと水餃子」。それは本作の主人公・鴻田麻里(奈緒)と有木野了(松田龍平)の2人が第1話で食べる料理であり、異色コンビを言い表したタイトルにもなっている。 外国人居住者が急増し、異文化が同居する“サラダボウル”の大都市・東京。本作は、国際捜査係の警察官・鴻田と警視庁通訳センターの中国語通訳人・“アリキーノ”こと有木野が、言語や文化の壁を越え、外国人居住者の心の声に寄り添い、救っていく物語。 “レタス頭”と呼ばれているミドリ髪の鴻田は、その見た目だけでなく新宿のど真ん中でサソリの丸焼きを食らい、中国料理店でいわゆるゲテモノ料理を注文する中身も強烈な、エネルギーの塊のようなキャラクター。人種に関係なく、助けを求める人に手を伸ばす姿は、細かな背景は違えど奈緒が主演を務めた『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)のイメージにも近く、彼女が演じる必然性と実際に地毛をミドリに染めているそのキャラクター性がかけ合わさった新境地の役とも言えるだろう。 一方の有木野は、通訳として鴻田と外国人の架け橋となる役割にある。鴻田とは対照的に感情を表に出すことはなく、できるだけ他人と距離を置きたい有木野は、店での注文も鴻田に合わせることはなく水餃子を頼む。一見すると正反対の2人ではあるが、互いを補いあうようにして絶妙な距離感の中で、日本の社会からこぼれ落ちそうになっている外国人を助けだし、事件を解決していく。奈緒は会見にて、「どれにも当てはまらないような2人の関係性が魅力的」と話していたが、それは本作の最大の見どころと言い換えても間違いではないはずだ。 筆者は完成試写会にて一足先に第1話を視聴しているが、驚くのが45分の尺の中で様々な言語がこれでもかというほどに飛び交うこと。もしかしたら、日本語の方が少ないのでは? というほどに、常に字幕が表示されている印象を受けた。改めてだが、警察通訳人とは外国人が絡む事案や手続きにおいて、警察官と被疑者や参考人の間をつなぐ通訳を務める人。外国人の習慣や文化背景の知識、聞き漏らさない高い集中力が求められる。また、話者の発言を区切りごとに全ての言葉を一言一句そのまま訳す逐次通訳を有木野は行っており、言葉に滲む感情やニュアンスも正確に訳さなければならない。演じる松田龍平は、今回初めて中国語を勉強しており、役作りには相当の時間と努力が費やされていることは想像に難くない。 有木野だけでなく、同じ警察通訳人として黒須雄介(関口メンディー)は英語、今井もみじ(武田玲奈)はベトナム語、清宮百合(イモトアヤコ)はシンハラ語を担当しており、事前番組では基礎から指導を受けている姿が映し出されている。第1話では有木野の中国語がメインとなっているが、今後回を重ねるごとに言語がさらに増えた“サラダボウル”が形作られていくのだろう。 コロナ禍を経て、ますます外国人居住者が増えていることを実感する東京。コンビニに行くとレジは外国人、チェーン店は外国人のワンオペということもしばしばだ。口数の少ない俯き加減の接客に目が止まりながらも、自分がもし同じ立場だったらどうだろうか、と相手を思いやるきっかけの一歩を作る、『東京サラダボウル』はそんな作品になっているように思う。
渡辺彰浩