ゆりやんレトリィバァ×唐田えりか×剛力彩芽、それぞれの覚悟と本音【「極悪女王」インタビュー】
ゆりやんレトリィバァがヒールレスラー・ダンプ松本を演じた、白石和彌総監督のNetflixシリーズ「極悪女王」(9月19日世界独占配信)。プロレス好きの少女が、全国民を煽り、敵に回しながら、人々を熱狂させる悪役プロレスラーという生き方を見つけ出す、リアルな戦いも体感できるドラマだ。 【撮り下ろし】ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽の力強い眼差し リアルで迫力満点のプロレスのだいご味とともに、胸を打つ人間ドラマが描かれる本作は、プロレスが苦手な人も含め、どこの国の、どんな人の琴線にも触れるだろう要素を持っている。 そんな作品を、全力で演じた3人。ダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァ 、クラッシュ・ギャルズの長与千種を演じた唐田えりか、ライオネス飛鳥を演じた剛力彩芽に、話を聞いた。プロレスシーンを自分でこなすガチなアクション作品に挑んだ覚悟、ゆりやんレトリィバァがケガをした報道の真相、作品を完成させての思いなど、3人の本音がバーストする。(取材・文/関口裕子、編集/大塚史貴) ――ご自身が演じた役のどんな部分に惹かれたかを教えてください。 ゆりやん:ヒールレスラーのダンプ松本さんは、元々は松本香さんというめっちゃ可愛くてピュアで真っすぐな女の子。でも内面に怒りがある。育った環境や人間関係、いつも自分を馬鹿にする世間にも怒っていたけれど、一番は自分のもどかしさに対する怒りだったのかもと思います。極悪レスラーのダンプ松本になるとき、世の中や、友だち、同期にも厳しい言葉を放って、あそこまでヒール役に徹することができたのは、そういう経験を踏まえて身に付いた、強さ、覚悟、 優しさがあったから。その全ての感情がぎゅっとなっているところが魅力で、大好きな方です。 唐田:長与千種さんの魅力は、強さだけじゃなくて、いろいろ経験してきた分、人の痛みが分かるところ。自分と向き合ってきたからこそ分かる弱さが、すごく魅力だなと思います。 剛力:ライオネス飛鳥さんは、純粋に強くて、プロレスが大好きな方。本来ならもっと違うやり方でプロレスラーとして立ちたかったんだと思います。そんな飛鳥さんの、クラッシュ・ギャルズを組んだ長与さんを守ろうとする姿勢や、ダンプ松本に挑む、密やかな闘志がいいんです。積極的に前に出るタイプじゃないかもしれませんが、その瞬間に放たれる強さが格好いい。言葉数は少ないですが、信念を持っている人は魅力的だと思いました。 ■「この作品なら名刺代わりになるかもという下心も」(ゆりやん) ――実際に活躍されたレスラー、ダンプ松本、長与千種、ライオネス飛鳥への思いと、オーディション以前にプロレスに抱いていた印象を教えてください。 ゆりやん:プロレスは知っていましたが、全然詳しくなくて。オーディションに受かってから、この時代の資料、ダンプさんが書かれた本やご本人のお話を聞いて、知識を得ました。 それ以前に、当時、健康面を考えて約3年かけて体重を45キロ減らしたところだったので、実はオーディションもどうしようって迷っていたんです。Netflix作品で、白石和彌監督で 、主役のオーディション。本来、絶対掴み取りたい役なのに、めっちゃ悩みました。一度、「私にはできないかもしれません」と伝えたときに、この作品で必要なのは、太った体じゃなくて、筋トレをし、栄養バランスを考えて作り込んだ、当時のダンプさんに近いプロレスラーの体だと言われ、それならできるかもと覚悟を決めてオーディションに挑みました。 私には、アメリカに進出して絶対売れるという夢がありまして、この作品なら名刺代わりになるかもという下心もありました。でも撮影が終わったいま、その考えはないですね。この体験をさせてもらっただけで、ありがたかった。「極悪女王」に選んでいただいてありがとうございますという気持ちです。 ■小学生の頃にアジャコングの標的になった唐田えりか 唐田:私は、お仕事がなかった時期に、当時のマネージャーさんからオーディションの話を聞きました。12人の女子レスラーの中からどの役になるかわからないというオーディションでしたが、マネージャーさんからは「長与千種がいいと思う」と言っていただき、当時、よく存じ上げなかったので調べ始めました。でも調べていくうちに長与さんに共感する部分がたくさんあって、勝手に運命的なものを感じ、この人を演じたいと強く思い、オーディションに挑みました。 プロレスは、小学生のときに1回見たことがありました。アジャコングさんの試合が、座っていられないぐらい怖くて、物陰から見ていたんです。そうしたら却って標的にされてしまって(笑)、台車をバーンと投げられたり、すごく怖い体験をしました。だから今回は、まずプロレスを好きになるところから始める必要があった。それを長与さんに相談したら、「プロレスは、観客みんなが自分を投影させ、主人公になる体験を提供できる芸術だ」と。「何度も立ち上がって戦う姿を見せることで、悔しさや生きづらさを吹き飛ばし、爽快な気分にさせることができるんだ」と、おっしゃっていました。 撮影が始まって、1日何千人もエキストラさんが入っているなかで戦ったとき、少しだけ長与さんの言葉が分かったような気になりました。 ■「30歳になる年で、独立したこともあり…」(剛力) 剛力:私も、この作品に携わらせていただく前は、ほとんどプロレスを見たことがありませんでした。でも知るとめちゃめちゃ奥が深いし、戦うにも敵との信頼関係や思いがないとできない。それはお芝居にも通じるエンタテインメントでもあって、もちろん一所懸命戦って、勝敗をつけるんですが、どう勝つか、どんなふうに負けるかによって、痛さ、苦しさ、悔しさの伝わり方が違う。本当にお芝居と通じるものがあり、プロレスへの感じ方が変わりました。今はマーベラスさんの試合などをよく観戦させていただいています。 今回、撮影に入るタイミングがちょうど30歳になる年で、独立したこともあり、これまで挑戦しなかったことをやるチャンスだと思って、オーディションを受けさせていただきました。また、白石監督とご一緒してみたいという思いもありました。この作品に出合い、体づくりやトレーニングをし、撮影に挑戦させてもらったことは、運命というか、ご縁だったと思います。 ■唐田からの「レトリ、今日ごはんに行かない?」という誘い ――そんなご本人たちからの反応はあったのでしょうか? ゆりやん:斎藤工さんが、ダンプさんと長与さんに聞いてくださった感想を共有してもらいました。ダンプさんと長与さんは、「年月を経て、物語を完結させてくれてありがとう」と言われたそうです。個人的には、ダンプさんに「ゆりやんにやってもらってよかった」と言ってもらったのがめちゃ嬉しかったです。 ――印象的だったシーンは? ゆりやん:もう全て。私たちは、撮影と言わずに試合と呼んでいましたが、全試合が印象に残っています。そのなかで2つあげます。 まず、えりかちゃんと話して、ダンプさんと長与さんのように、喋らず、挨拶もしないのを実行してみたこと。松本香時代からずっと一緒にやってきたダンプさんと千種さんの心がすれ違って、微妙な関係性になってしまったのを再現してみたんです。そうしたら、あんなに仲良かったのに、私たちもめっちゃ気まずくなって。えりかが向こうでみんなと楽しそうに喋っていることに腹が立つし、私のこと本当に嫌いになっちゃったのかも(笑)と悲しくなったり。 これ、やってよかったと思っていますが、クライマックスの髪切りマッチの撮影前日、リハーサルがうまくいかなかったんです。そうしたら、その晩、えりかちゃんが「レトリ、今日ごはんに行かない?」と誘ってくれて。久しぶりにめっちゃ喋ったら、私たち仲良かったんだ、信頼できる相手なんだと思い出して(笑)。あのときどういう気持ちでいるのかとか、髪切りのシーンではこのぐらい掴むよとか話し合い、次の日からの髪切りマッチは、本当に息ぴったりでうまくいきました。 髪切りマッチの撮影は、実際にえりかちゃんの髪の毛を刈るので、間違いないよう、みんな集中していたと思います。でも試合中は、頭に血が昇るのでいっぱいいっぱい。撮影終了後、少し冷静になって、えりかちゃんを見たら、覚悟を持って臨んだことが伝わってきて、グッときました。でも、その覚悟はたぶんダンプさんも一緒だったんです。演じる前は、「やってやった」みたいな気持ちなのかと思っていましたが、試合後、とにかく震えも、涙も止まらない。きっとダンプさんもすごい覚悟でやってはったんやなと思いました。 もうひとつは引退試合のとき。本当にお客さんごとその時代にタイムスリップしたかのような臨場感だったのが、印象的でした。 ■何度も参加したエキストラから「おまえ強くなったな」 唐田:エキストラさんの中には、何回も来てくれている方がいて、レトリはその方から「おまえ強くなったな」みたいに言われてたよね(笑)。エキストラさんも本当に試合を見ているかのように盛り上がっていて、ドキュメンタリーみたいでした。 印象的なのは、飛鳥と香の顔です。4話の、テンカウントが始まって返したいのに返せずにいる千種を見下ろす飛鳥(剛力)の顔。レトリは、3話のダンプ覚醒のときの、私を見下ろす顔です。私は、2人から見下ろされることが多かったのですが(笑)、あのときの2人の顔は忘れられません。千種と香は落ちこぼれでしたが、先に千種がスターになる。でも、千種は、必ず香もこっち側に来ると思っている。だから試合で痛めつけられれば怒りもしますが、顔を見ると、待っていたような不思議な気持ちになるわけです。試合のシーンでは、技の記憶もありますが、それ以上に、想像もしてなかった感情を、2人から引き出してもらったことのほうが印象に残っています。 ■ニールキックは代役ではなく「絶対に自分でやりたかった」(唐田) 剛力:私は、ジャガーさんと戦う唐ちゃんが、ニールキックで倒れたジャガーさんに、目で「起きろよ」みたいに言うのが忘れられません。その目が、鳥肌が立つぐらいスターだったというか。長与千種としてもだけど、唐田えりかが輝いていると思いました。あのとき私は、ライオネス飛鳥として、この人を輝かせるために生きる覚悟が決まりました。 唐田:ありがとうございます。ニールキックは、長与さんの得意技で、飛んで相手を蹴ってから受け身を取るんです。難しいので、最初は代役を立てるという話だったんですが、絶対に自分でやりたかった。ニールキックのために、みんなとは別にキックボクシングの練習や、蹴りと受け身の練習をひたすらしていました。これはみんなそうなんですが、プロレスのシーンを、ちゃんと自分でやっているところも見ていただければなと思います。 剛力:そうね。ゆりやんは、引退試合で千種に「一緒に来い。私たち、これじゃ終われないんだ」と言うときの表情や、リングの上で、香からダンプ松本になっていく瞬間の、メイクだけでできることではない表情の変化ですね。飛鳥が戦うシーンは意外と少なくて、ロープのところから見ていることが多かったんですが、リングの上の、情熱とエネルギーがほとばしるダンプ松本と長与千種に混ざれないことが悔しいと感じる瞬間はありました。1番近くで見られたので、特等席ではありましたが。 ゆりやん:ありがとう。私も、めいちゃんがロープから見ている姿が忘れられない。髪切りマッチのときの「もうやめろ」ってタオルを投げたときの表情も。 剛力:投げたタオルを踏みつけられると、自然と悔しさが湧き上がるよね(笑)。あのタオル、テストのときはうまく飛ぶのに、本番では手前に落ちたり、なかなかうまく飛ばないのよ。 ■「心から湧き上がる感情で表現することを初めて味わった」(ゆりやん) ――この作品は、みなさんのキャリアにおいて、どういう位置付けになる作品なのでしょうか? ゆりやん:得るものがありすぎて、逆に「極悪女王」に出させてもらってなかったら私ってどうなってたのと思うぐらい、私の人生にとって本当に大きな作品です。悲しいから涙を流すとか、怒っているから怖い顔をするではなく、心から湧き上がる感情で表現することを初めて味わいました。芸人としても、人間としても、今までやったことのない表現方法で、思いっきりさらけ出すことができたのは非常に大きかったと思います。 唐田:レトリと同じで、この作品に出られていなかったらどうなっていたんだろうと思う、めちゃめちゃ大きい作品です。胸を張って代表作と言えるものがやっとできたかもしれないという嬉しさもあります。お仕事がなかった時期に決まった作品ですので、決めてくださった白石監督にも感謝しています。私が頑張れているのは、あの時期、私に向き合ってくれた事務所の社長やマネージャーさん、家族がいたから。その人たちに届けられる作品がやっとできたのは、素直に嬉しいです。 剛力:どう受け取ってもらえるか分からない不安はありますが、30代で、皆さんがイメージしなかったことに挑戦させてもらえたのは素直に嬉しいです。これができたのは、素晴らしくプロフェッショナルなスタッフさん、トレーナーさん、栄養管理士さん、撮影チーム、俳優陣のおかげ。それぞれが全力を出し切るなかでやらせていただく感覚は初めてでした。プロレスというリスクある演技をするにあたり、自分を俯瞰で見ることも学べた。相手に怪我させない、自分も怪我しないようにと、冷静な自分の存在は、これまでお芝居をしていて味わったことのないものでした。以降は、お芝居をしていても、どこか冷静な自分がいる感じで、また違う芝居の仕方を発見したと思います。 ■「食べるのが面倒くさいと思ったのは初めて」(唐田) 「泣きながら食べていました(笑)」(剛力) ――プロレスラーの体は、どんなふうに作っていったのでしょう? ゆりやん:私だけ、減量のときからお世話になっている岡部友先生についてもらいました。ほぼ毎日、筋力トレーニングとメンテナンスを行い、重量を使って、大きい筋肉になるようにメニューを組んでいただきました。当時のダンプさんのように、プロレスの動きができるように体幹を鍛え、体力と筋肉が付くよう指導してもらいました。食事は、毎月、血液検査や健康診断を行い、体に負担がかからないように、体重を増やすための食事をしました。お腹いっぱい食べるって実は本当に大変で、太るのってなんでこんなに大変なんだって、人生で初めて思いました(笑)。最終的に40キロぐらい増量しましたが、血液検査も異常なしで、無事に撮影に臨めたことを感謝いたします(笑)。 唐田:この役が決まった時に10キロ増量しましょうということになって、撮影の半年前から、栄養士さん、トレーナーさん、整体師さんの指導やメンテナンスを受けながら、ねえさん(剛力)と一緒に週3の筋力トレーニングと、みんなで週2回のプロレス練習をやりました。私も食べまくったんですが、食べるのが面倒くさいと思ったのは初めてです。噛むことも面倒くさいし、常にお腹いっぱいで気持ち悪い。レトリが4人前のお肉を食べているのを見て、もっと頑張んなきゃと思ったり。 筋トレは、レトリとは別メニューで、Netflixさんが作ってくれたジムで、ねえさんと一緒にトレーニングしました。食事の管理などサポート面は充実していましたが、私もねえさんも、なかなか太りにくい体質で、栄養士さんからは血液検査に悪い結果が出ない限りは、好きなものを食べてくださいと言われたので、私は大好きなラーメンをめっちゃ食べていました(笑)。 剛力:私も基本的には皆さんと一緒です。あのとき初めて、ものを食べている最中でも、口の中が乾燥することを知りました(笑)。そうなると何を食べても味がしないし、マジで泣きながら食べていました(笑)。 全員:泣いたよね(笑)。 剛力:私はもともと、野菜やおかゆ、ささみなど、カロリーの低いものが好きで、お肉はあまり量を食べなかったんです。そうするとトレーニングで消費してしまうので全然太れない。でもプロの方がついてくださったので、私はトレーニングで体を大きくしていく方針になりました。もちろん食べましたけれど、トレーニングはすごく好きなので、筋肉で大きく見せるほうが適していたというか。それでも、なかなか脂肪がつかなくて、マジでもう無理かもと落ち込むこともありましたが、ちょっとずつ増量していき、撮影には10キロ増量で臨みました。 ゆりやん:私は、主に焼肉と山盛りのご飯で増量したんですが、そうしたら焼肉屋さんとめっちゃ仲良くなって(笑)。最近はちょっと連絡取れていないんですけれど、また行きたいです。 ■血糊の量が多くなるにしたがって喜ぶ白石監督 ――出演理由を、白石監督の作品に出たかったとおっしゃっていましたが、監督の演出、もしくはお話のなかで印象に残っていることがあれば教えてください。 ゆりやん:和彌監督の演出は、もうとにかく面白いんですよ。「なんかこうやってさ、吸いながらやってみてよ」とか、「これどういう意味か分からないけど、それで行こう」みたいに、なんかいつもにこにこしながら演出しはるんです。和彌監督が教えてくださった「ダンプさんは人を見るとき、まず目から行く」という演技は、今も私生活で使っています(笑)。目から行くダンプさんに注目していただけると面白いんじゃないかと思います。 唐田:私は、白石監督に「こうして」と言われた記憶がないんですよ。 剛力:私も。でも面白いことをやったり、思い切ったことをやると、すごく笑ってくれた印象はあります。 唐田:白石監督は、カットのかけ方で、今のがオッケーだったかどうか分かるんですよね。あのカットの声が聞きたくてがんばるというのもあります(笑)。 ゆりやん:絶対にOKやっていうときは、「(雄叫びのように)オッッケェェイ!」「カァットォオオ!」。でも「はい、オッケー」「はい、カット」のときは、「もう一回いかなかな」と(笑)。テンション感が違うんですよね。 全員:分かるー。 剛力:印象的だったのは、血糊の量が多くなるにしたがって喜ぶ姿。「この血糊の量でいいですか?」って聞かれるたびに、すごく嬉しそう(笑)。 唐田:あれはゾーンに入っていましたよね。「これが白石和彌か」と(笑)。もうひとつ、試合のシーンを撮っていたとき、映りこむお客さんへの演技指示を、助監督さんに細かく出されていたこと。しっかり周りも見ているのが印象的でした。 剛力:助監督さんたちがみんなフルに動いていたのも印象深いですよね。プロレス関係者担当の人、エキストラさん担当と、白石さんの指示もあって、一人ひとりが細やかに動かれていました。 ゆりやん:和彌監督は、動きをかなり私たちの感情に任せてくださっていましたよね。なんか信じてもらっている感じがしました。 剛力:必ず1回は、そのまま動かせてくれたよね。 ■髪切りマッチのシーンは約1カ月かけて撮影 ――臨場感のあるプロレススシーンは、どんなふうに撮影したのでしょう? ゆりやん:まずその試合の流れを、長与さんと監督が作られ、それをマーベラスさんが役名を書いたゼッケンをつけて実演し、動画にしてくださる。その動画をパートごとに見て、動きをゆっくり練習し、自分たちで流れを覚えていく感じです。 できたら実際の速さでやってみて、それを練習して、流れを体に沁み込ませて撮影。撮影は、違うアングルで何回も撮っていきます。それが基本です。 剛力:短い試合でも1日はかかるので、大体は何日かに分けて撮りました。 唐田:髪切りマッチのシーンは約1カ月ですよね。7月7日に坊主になったので、クランクアップから1年以上経ちましたね。 剛力:その間に違う撮影もしたり、あ、撮影じゃない、試合だった(笑)。 ゆりやん:楽しかったなぁ。 剛力:途中から、ドラマ部分の芝居をするのが気恥ずかしくなることもあったよね。リングでは叫び合うことが多かったから、どういうふうに普通のお芝居するんだっけと(笑)。 ■リング上で「オラァ」、終われば「何食べよっか?」 ――そんな激しい試合やドラマの撮影のあと、メンタルはどう回復させたのでしょう? ゆりやん:私は、大切な試合が終わったときは控え室でも結構高揚していることがありました。でも、ベースは部活みたいな感じで、リングの上では「オラァ」なのに、終われば「何食べよっか?(笑)」とか言っていて。みんなで一緒にいるのが楽しかったし、変な引きずり方をすることはありませんでした。現場に一体感があったからかな。試合を見たお母さん役の仙道(敦子)さんが、涙を流してくださったり……。優しいんです。 唐田:私は普段、結構引きずりがちなんです。でも、今回は引きずらなかった。長与さんは、感情に裏表がなく、能動的に動く方。私もそんなふうに挑んでみようと思っていたので、いつもより、さらに感情をさらけ出していました。だから、あの時期はすごく生意気だったんじゃないかと思います(笑)。撮影が終わると、「ご飯行く?」とか部活みたいな感じに仲が良くて、悪い引きずり方をする要素がなかったんでしょうね。 剛力:みんなが自分の役割に、真剣に向き合っていたのもあるでしょうね。私はすっごく帰るのが早かったのですが。 ゆりやん・唐田:早かったー! 剛力:早く寝たいのと、メンテナンスに行くので、めっちゃ早く帰っていました(笑)。 ゆりやん:私たちは、ずっとメンテナンスのトレーナーの篠崎さんのところでダラダラしてたね。 唐田:保健室って呼んでいました(笑)。氷漬け……、アイシングされてね。 ゆりやん:めっちゃ部活でした。 ■ゆりやんケガによるネガティブ報道 「作品で見返してやろう」「見てろよ」 ――そんな丁寧で温かい現場ではあっても、ゆりやんさんがケガされたとき、ネガティブな報道が出ました。あの報道を受けて、現場の結束が強くなるなど変化はありましたか? ゆりやん:結束は高まったと思います。記事に、「過酷な撮影」みたいに書かれていましたが、実際は先ほど言った通り、全然そんなことなくて。でもこの怪我によって、体制やケア方法がさらに見直されたのは確かです。個人的なことで言うと、休んでいるときにみんなからもらった、メッセージの色紙がめっちゃ嬉しかったし、ケガが治ってからも追加で半年ぐらい練習期間を設けてくださったので、第2期に向けて気持ちを新たにできたのがとてもプラスでした。ケガをしたのが、3話が終わったあとで、撮影再開とともに新章というか、4話だったので、みんなの表情が全然違っているのもぴったりだったと思います。 剛力:あの追加トレーニング期間で、ある意味、よりたくましく、強くなったもんね。第2期は、みんな顔付きも違っていた(笑)。正直、報道に抗議できない、悔しさみたいなものはありました。当然、私たちは真実を知っているので。でも何も言えない分、「作品で見返してやろう」「見てろよ」という気持ちで取り組めたかもしれません。