『全領域異常解決室』は令和を代表するミステリードラマに ラストの描写に続編の可能性?
ついに明らかになったヒルコの正体は……
そこで待っていたのは直毘吉道(柿澤勇人)。ヒルコによって操られているかに思われた直毘だったが、その正体は飛鳥時代の呪術者・役小角、つまりヒルコだったのだ。直毘の怪しさは回を重ねるごとに深まっていったが、まさか興玉が仕掛けた犬神の毛が役に立とうとは。かつては万物に感謝しながら生きていた人間が科学の発展によって傲慢さを増していったという直毘の主張は一理あるのかもしれない。だが、それが人間を見下していいことにはならない。あれだけ人間を信頼していなかった興玉が「何度裏切られても人間たちを信じ続けるしかないんです」と語るシーンには目頭が熱くなった。 そして雨野の過去も明かされる。ヒルコによって事戸渡しをしたかに思われていたが、雨野は興玉を守るために自ら事戸を渡すことに決めたのだった。事の経緯を知った興玉の目には涙が浮かぶ。雨野と興玉は私たちが思っている以上に強い絆で結ばれていたのだ。 クライマックスでは荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)が救援にやってくるという胸アツな展開となったが、直毘に操られた興玉を救ったのは荒波ではなく雨野だった。すでに事戸を渡して人間になっている雨野には呼び出しの能力はないはず。だが、興玉には雨野の鈴の音がしっかり届いていた。2人の間の時代を超えたプラトニックな愛情は、私たちに深い余韻を残してくれていた。 張り巡らされた秀逸な伏線と練られたストーリーだけではなく、人間のあり方をも問い直してくれた『全領域異常解決室』。令和を代表するミステリードラマとして、私たちの脳裏に刻まれることだろう。気になったのはラストの二宮の行動。もしかすると続編の可能性もあるのだろうか。最終話の余韻に浸りつつ、続編にも期待を寄せたい。
川崎龍也