【見えない家事】目を向け分かち合おう(1月19日)
男性の家事や育児への参加が求められて久しい中、県は「見えない家事」の存在を知ってもらう取り組みを始めた。食品や日用品の在庫を確認したり、食事の献立を考えたり、家事と認識されにくい営みを紹介する動画を作り、昨年末から公開している。女性に依然偏りがちな負担を改め、全員参加型の社会を築くのに有効活用するべきだ。 動画は約14分のアニメで、ロボットが若い夫婦に見えない多くの家事を伝える。保育園の連絡帳への記入、新しいごみ袋の据え付けなど数限りない。掃除、洗濯、買い物といった明確な呼び方のない「名もなき家事」とも言える。各家庭に合った分担を話し合ってほしいと動画で促す。 「見えない家事 福島県」などで検索し、ユーチューブで見ることができる。県はホームページなどで視聴を呼びかけている。県内市町村には結婚新生活支援事業の受給者に見てもらうよう要請した。企業や業界団体にも働きかけ、経営者や従業員の行動につなげてもらいたい。飲食店や商業施設などにQRコードを備え、スマートフォンをかざせば手軽に見られるような仕組みづくりも提案したい。
国立社会保障・人口問題研究所が配偶者のいる女性を対象に実施した一昨年の調査によると、妻が家事を担う割合は80・6%に達する。割合は低下傾向にあるとはいえ、女性に大きく偏る現状は続いている。世界経済フォーラム(WEF)が算出した日本の男女格差(ジェンダー・ギャップ)指数は146カ国中125位にとどまる。収入や政治参画などでの隔たりを解消するには、家庭内で固定化された役割分担の見直しが欠かせない。見えない家事のように、何げなく任せがちな日常の習慣にもしっかりと目を配り、分かち合いたい。 伊達市は見えない家事のチェックリストを作り、市民に利用を呼びかけている。こうした市町村単位の工夫を促し、共有する施策も重要だ。 総務省によると、本県は転出による女性の減少数が全国で最も多い。性別による人口の不均衡は少子化と人口減少を加速させ、地域の存続にかかわる。誰もが暮らしやすく働きやすい環境づくりが急がれる。その土台として県民や企業の家事への認識を高める必要がある。(渡部育夫)