ドライバーを迷わす「名古屋のバスレーン」って何?
名古屋独特の「バスレーン」をめぐり、見直しの議論が本格化されようとしている。道路中央にバスを走らせる世界でも珍しい交通システムだが、複雑な車線が一般ドライバーを困惑させ、当の市営バスも「逆走」する事態が絶えない。建設から30年近くが経ち、まさに「曲がり角」を迎えているようだ。
■「世界先端」として30年前に導入 「中央走行方式基幹バスレーン」と呼ばれるこのシステムは1985年4月、名古屋市中心部の「桜通大津」から東部の住宅地「引山」間の9.2キロで運行が始まった。片側3車線の中央分離帯にバス停を設け、東向きのバスレーンと西向きのバスレーンが交互にバス停に接するよう、道路表示や色分けがされている。平日の午前7-9時、午後5-7時はバス専用とされ、それ以外の時間帯は一般車両も通行ができる。 関係者によれば、バスを中央寄りに走らせることで、左端にバス停がある場合よりスムーズに運行できる。先端的で、かつ地下鉄整備より安価だとして日本で初めて、世界でも南米などに次いで導入された。 しかし、バスを交互に中央へ寄せるため、片側3車線のうち1車線が逆方向のバスレーンになる部分が出てきて、「逆走」を招きやすい。また、交差点で一般車両が右折するためには、バスレーン2車線分を越えなければならない。直進車両に両側を挟まれながら右折のタイミングを待つという格好だ。 筆者も10年ほど前に初めてバスレーンを走ったとき、一般車線が1車線になったり2車線になったり、対向車両がまっすぐ向かって来て一瞬「ヒヤリ」としたが、交差点の中でうまくすれ違えるようになっていたりと、レーシングゲームに似たスリリングな感覚を味わった。 慣れてしまうと逆に面白く感じるようになり、バス専用でない時間帯は「バスレーンを使っていかに速く進むか」を考えてしまう。バスレーンを通ると、しばらくはスムーズに走れているのだが、バス車両がバス停で客を乗降させていると、とたんに詰まる。そこで、前にバスが見えたら早めに一般車線に入り、バス停に止まっているところを追い越したら再びバスレーンへ戻る。そんな「上級者」の車がバスレーンと一般車線を行ったり来たりして、まさにレース状態で入り乱れているのが実態なのだ。