小雪の経験が『ブギウギ』にもたらす説得力 一本筋の通ったトミの“家族の在り方”とは
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の第17週となる「ほんまに離れとうない」が放送された。スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の結婚話、愛助の喀血と再入院、そして箱根旅行に妊娠と、『ブギウギ』はこの5日間で怒涛の展開を見せた。 【写真】『ブギウギ』病室で見つめ合うスズ子(趣里)と愛助(水上恒司) 結婚を考える2人の前に立ちはだかるのは、やはりトミ(小雪)の存在だった。トミは愛助の母親にして、日本を代表する興行会社である村山興業の社長だ。大切な社員、芸人を抱え、信念を持って経営を続けてきたトミには「家族への想い」や「家族の在り方」に自分の考えがある。このことがスズ子と愛助が結婚するための大きな障壁となってきた。 トミは決して悪い人物ではない。体の弱い一人息子の愛助を人一倍愛しており、自分が息子を守らなければという強い想いを持っている。スズ子に対するキツい態度も、愛助を心配し、愛しているがゆえのことなのだ。トミが考える家族とは、彼女が山下(近藤芳正)に放った「子供だけの問題やない。これは家族をどう考えるかの問題や。村山は家族や。家族はおんなじ方向を向いて頑張らなあかんのや」の言葉からもはっきりとわかる。 トミが重視するのは、家族が一丸となり同じ目的に突き進むこと。スズ子と愛助がどんなに愛し合っていたとしても、愛助が村山興業の仕事を、スズ子が歌手の仕事を頑張るという状況が、トミにとっては本意ではないのだろう。さらにトミの意識する家族は、自分と愛助、スズ子、お腹の赤ちゃんのことだけではない。愛助がもし村山興業を継いだら、社員や芸人までも家族のように大切にして欲しい、そしてスズ子にはそんな大きな意味での家庭を支えて欲しいという思いがある。だが、他人に「家族の在り方」を説くのは難しい。トミにはトミの意見があるように、愛助にもスズ子にも自分の思い描く「家族」や「人生」があるのだから。 そんなトミを演じるのが小雪だ。もともとモデルとして芸能活動をはじめた小雪は、その後『恋はあせらず』(フジテレビ系)で女優デビューを果たし、『きみはペット』(TBS系)でのスミレ役や『エンジン』(フジテレビ系)の水越朋美役など、数々の名ドラマで活躍。女優としても確固たる知名度を獲得した。 『ブギウギ』のトミ役では、その佇まいから溢れる威厳が魅力である。演技の素晴らしさもさることながら、モデルをしていた経験や、持ち前の高身長が役を演じる上で活きているのだろう。和服姿にすらっとした佇まい、物怖じすることのない口ぶりは、トミの築いてきた地位や圧倒的な強さをことさら強調する。それでいてただ恐怖感を撒き散らすだけでなく、凛とした信念や一本筋の通った愛情が感じられるところが素晴らしい。愛助とスズ子の結婚のことも、村山興業を思う気持ちも、実は共感できないほどメチャクチャなことを言っているわけではない。だからこそ、トミの“一理ある言い分”は『ブギウギ』を観るにあたり、深く考えさせられるパートにもなっているのだ。 問題が片付かないままに、次から次へと色々な事が起きた第17週。トミが愛助とスズ子の結婚を受け入れられないまま、善一(草彅剛)が持ってきた「ジャズカルメン」の話は進み、お腹の赤ちゃんも大きくなる。果たしてスズ子と愛助はどうなってしまうのか。
Nana Numoto