二宮和也自身と重なる天城のエンターテイナーぶり 『ブラックペアンS2』圧巻の手術シーン
世界で唯一、高難易度のダイレクトアナストモーシスなる術式を扱うことができる天才的な外科医・天城雪彦(二宮和也)を、オーストラリアから日本へ連れ戻すことに成功した世良(竹内涼真)。世良が東城大病院の院長である佐伯(内野聖陽)から託された天城への手紙には、彼を心臓外科専門の新病院のセンター長に推挙するということが書かれており、すなわち天城の来日は東城大病院の院内政治に大きな波乱をもたらすということを意味している。 【写真】『ブギウギ』スズ子とは別人! 趣里が演じる意外な過去が明らかになった猫田 『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)は、7月14日に放送された第2話から東城大病院へと舞台を移す。他の医師たちのオペを見学して回ったり、先述の新病院センター長への推挙の件、さらには自身の技術を披露するために公開手術を行なうと言いだしたりと、瞬く間に病院中の反感を買う天城。そんななか、世良が担当していた繁野(誠直也)という患者の検査結果に異常が見受けられ、ダイレクトアナストモーシスを受けなければ助からないことが判明。すると天城は、繁野の孫娘の結衣(堀越麗禾)に対し、繁野の手術を引き受ける条件として“賭け”を持ちかけるのである。 医療ドラマ、とりわけ外科を扱う医療ドラマにおいて手術シーンは最大の見せ場であり、ある種の“ショー”として機能することは言わずもがな。自らの華々しい日本医療界デビューを飾るべく、公開手術という文字通りの“ショー”を計画する天城。確かに前回、彼は世良に対して自身の手術を「芸術」であると豪語していた。芸術である以上は、公にされて然るべきものであろう。いずれにせよ、原作では文字情報でしかなかった公開手術の光景が映像として可視化され、ホールのステージ上にガラス張りの特設手術室が鎮座する様は実に異質なものであった。 そこで繰り広げられる公開手術シーンは、前回の“速さ”を際立たせる手術シーンとは異なる緊張感で満ちており、近年のあらゆる医療ドラマの手術シーンと比較しても頭ひとつ抜けた見応え。天城という医師の正確な手腕とそれを司る恐ろしいほどの冷静さ、そして彼自身の自己顕示欲の高さをまざまざと示すものであり、これから東城大病院に嵐を巻き起こすこの男が、稀代のエンターテイナーであることを証明している。 同時に、無類の金の亡者(ギャンブラー)というキャラクター付けがされている彼ではあるが、今回持ちかける“賭け”は前回のカジノのようなものではなく、相手がまだ幼い少女であるという点を考慮に入れてか、極めて人道的というか合理的なものであった。それは前回、パク・ミンジュ(キム・ムジュン)の母を救った一連で得た飲食店の権利のなかから彼ら家族の思い出が詰まった店舗の権利のみを返却した際にも見受けられた、“悪魔”のなかにある人間的な一面。天城がこのような一面を持ち合わせている理由は、後々描かれていくのだろう。 ちなみにこの公開手術の一連は、原作のひとつである『ブレイズメス1990』におけるメイントピックであり、前回描かれた海外から天城を連れ戻す一連と、この公開手術の一連をもって一本の作品が構成されていた。つまりこのドラマは2作ある原作小説のひとつを、たった2話でさっぱりと片付けたということになる。今後のエピソードでどのようなストーリー運びがされるのかは気になるところだ。
久保田和馬