まさに「雨らめしや~」 降雨で幻と消えた“勝利”と地元凱旋の“快打”
“水入り”からの劇的展開
ドーム球場が普及したとはいえ、阪神、DeNA、ヤクルト、広島、ロッテ、楽天の6球団が今も屋根のない球場を本拠地にしており、梅雨の季節には雨天中止やコールドゲームも多くなる。意地悪な雨によって、勝利や快打が幻と消えてしまった皮肉な事例を紹介する。【久保田龍雄/ライター】 【写真】昨年、野球殿堂入りを果たしたバース氏。40年近い歳月を経て岡田監督と久しぶりの2ショット
降雨による長時間の試合中断で、目前の勝利が文字どおり水に流れてしまったのが、2003年のオリックスである。 7月11日のロッテ戦、オリックスは5日前の来日初先発初登板の日本ハム戦で勝利投手になったばかりの先発・フィリップスが、この日も5安打6奪三振の無失点と好投し、8回を終わって4対0とリード。 ところが、完封勝利まであと3人の9回表、突然激しくなった雨に手元を狂わせたフィリップスは、フェルナンデス、ショートの連続二塁打で1点を失ったあと、立川隆史にも四球を許し、無死一、二塁のピンチ。ここで試合は45分中断し、“水入り”となった。 そして、再開直後、フィリップスをリリーフした加藤大輔が、初芝清への初球、141キロをいきなり右中間席に運ばれ、あっという間に4対4の同点。試合はそのまま延長戦へ。その後は両軍ゼロ行進を続け、4時間53分の死闘の末、12回引き分けとなった。 目前の勝利を逃したオリックス・レオン監督は「もっと強く降りつづいてくれたら(9回途中コールドで勝ち)良かったのに……」と大ボヤキ。この日勝っていれば、対ロッテ戦の連敗記録が球団ワーストの「8」で止まり、本拠地での連敗記録も「8」でストップしていただけに、まさに“雨らめしや~”だった。 一方、完封負け寸前から“恵みの雨”に救われた形のロッテ・山本功児監督は「8割方負けたと思っていた。初芝がよく打ってくれた」とまるで勝ったような喜びようだった。
「あれで流れが変わったよ。あの回から腹立ってたんよ」
オリックス時代の岡田彰布監督が、降雨中断に際し、露骨な遅延行為にぶち切れたのが、2012年6月8日、甲子園での古巣・阪神戦だった。 4回に相手エラーで1点を先制したオリックスだったが、1対0の5回表、断続的に降っていた雨が激しくなり、試合が中断。このまま中止になれば、ノーゲームで1点リードもパーになってしまうとあって、岡田監督は気を揉んだが、何とか試合再開が決まる。4人の審判が位置につき、オリックスも後藤光尊、野中信吾の1、2番が次打者席で待機していた。 ところが、阪神ナインはなかなか守備に就こうとしない。「時計も動いていて、審判が出ろ、出ろ、というのに出ない。グラウンド整備もしてない。何してんのかなと思った」(野中)。これでは降雨ノーゲーム狙いの遅延行為と思われても仕方がない。 業を煮やした岡田監督がベンチを飛び出し、丹波幸一球審に説明を求めた。 「(球審が)『出ろ』言うたんやけど、出えへんかった。遅延行為よ。ルール上、放棄試合よ。あんな光景は初めて見た」(岡田監督) その後、阪神ナインがようやく守備に就き、試合再開となったが、雨で4度にわたって計14分試合が中断する悪条件のなか、オリックスは7回に4番手・平野佳寿が金本知憲に3ランを被弾し、1対3と痛恨の逆転負け。パ・リーグ最下位に転落した。 9回に代打・日高剛を告げる際に、丹波球審に連盟に対して意見書などを含めて問題提起する意向があることを伝えた岡田監督は「あれ(5回の遅延行為)で流れが変わったよ。あの回から腹立ってたんよ。お客さんも見てるやん。ベンチから出えへんかったら、遅延行為よ」と試合後も怒りが収まらなかった。