ウクライナ東部チャソフヤール防衛が重要な理由、陥落すれば戦略上大きな痛手に
ロシア軍部隊がウクライナ東部のチャソフヤールの東側に到達した。この町は、壊滅的な被害を受けたバフムトから西へ約11キロほどに位置する。 チャソフヤールは、ウクライナ軍の再編成地点や前線砲兵拠点として使われてきた。ロシア軍がこの町を占拠すれば、いわゆる「要塞都市」数カ所に対して直接攻撃を仕掛けることができる。 要衝チャソフヤールについて重要な点をまとめた。 <なぜチャソフヤールが重要なのか> ロシア語で「静かな渓谷」という意味のチャソフヤールは、ロシアが併合を主張するウクライナ4地域の1つ、ドネツク州の工業地帯ドンバス地域にある。 チャソフヤールは高台にあり、ロシア軍によって広範囲が砲撃され、被害を受けた。開戦前の人口は1万2000人だったが、現在も残っているのはわずか数百人の高齢者だけだ。 ロシア軍がチャソフヤールを奪取すれば、ウクライナの複数の「要塞都市」に対する直接攻撃が可能になる。 米シンクタンクの戦争研究所は、要塞都市をウクライナ軍の東部防衛における「基幹」だと位置づけている。 ロシアの軍事専門家によればこの要塞都市とは、ドネツク州のスラビャンスク、クラマトルスク、ドルジキフカ、コスチャンティニフカの4都市だという。 戦争研究所は、とくにドルジキフカとコスチャンティニフカを失えば、戦略上大きな後退となり、覆すことは困難だと指摘する。 <戦闘の状況は> 信頼できる公的データはウクライナ・ロシア双方とも存在しないものの、ロシア軍が長期間にわたってバフムトとアブデーフカを占領した際、双方に多数の死傷者が出た。 ロシア政府の元高官は、チャソフヤール攻略も同様にロシア側にとって厳しいものになるだろうと予測する。 ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、東部の戦況が悪化していると述べた。 だがチャソフヤール防衛にあたるウクライナ軍部隊には弾薬と無人機が供給され、今のところロシア軍の攻撃を食い止めているという。 旧ソ連がナチス・ドイツに勝利したことを祝う5月9日の戦勝記念日までに、ロシアはこの町を占領することを狙っているとシルスキー総司令官は指摘した。 ロシア政府はそのような期限設定を否定している。従軍記者や専門家によると、ロシア軍はウクライナ軍を圧迫し、西方へ追いやろうと試みる可能性が高いという。 ウクライナの専門家はXで、ロシアは戦闘に向けて予備役を集めているとの見方を示した。