中国、戦狼外交からパンダ外交に? 〝モフモフ外交官〟相次ぎ米国へ 対中包囲網で軟化か
両国の関係に改善の兆しが見えたのは昨年秋の米中首脳会談。習氏は米サンフランシスコでの講演で、パンダについて「米国と協力を続ける用意がある」と発言し、新たなパンダ貸与に積極姿勢を示していた。
■経済低調で「戦狼」トーンダウン
最近の中国の外交姿勢について、東京財団政策研究所の柯隆(か・りゅう)主席研究員は「『戦狼外交』から『パンダ外交』にシフトしている」とみる。
柯氏によると、「これまで北京の指導者の多くは中国の経済や技術力を過大評価していた。中国の協力がなければ先進国は成長できないだろうと踏んでおり、それが『戦狼外交』につながっていた」という。だが実際には、新型コロナウイルス禍が過ぎても「中国経済が想定より回復していない」一方、西側諸国は経済と安全保障の両面で「対中包囲網」を強化してきた。
「このまま『戦狼外交』を続ければ、自国の発展がかえって遅れてしまうことに北京の指導者がようやく気づき、トーンダウンさせているのが現状だ。『パンダ外交』で腰を低くし、友好的なムードを醸成することで、安心して中国に投資してほしい―というのが一番の狙いだろう」(柯氏)
米シンクタンク「ハドソン研究所」のマンキューソ客員上席研究員も「『パンダ外交』はこの数年、中国から聞こえてきた『戦狼外交』とは対照的だ」と米メディア「WTOPニュース」に対して語った。
ただ、マンキューソ氏は「パンダは愛されているが、米中関係の力学を根本から変えることはない」とも指摘。「中国が依然として米国の戦略上の競争相手であるのは変わらない。中国は米国だけでなく世界中の国々との緊張を和らげるため、パンダを利用している」と警戒感を示した。(本間英士)