【世界の野球(6)】「必ず礼をする日本人選手」がアメリカで話題に
「TOMA」というボードを掲げて試合の応援に来てくれる観客もいた(2010年当時の映像)
【連載・色川冬馬の世界の野球~アメリカ編(6)~】 2015年から、野球のパキスタン代表監督を日本人の色川冬馬さん(26)が務めている。選手としてアメリカの独立リーグやプエルトリコ、メキシコのリーグでプレーし、その後代表監督としてイラン、パキスタンを指揮した色川さん。これまでの経験を通じて世界各地の野球文化や事情を紹介するとともに、日本野球のあるべき姿を探っていく。 ◇
試合終了は夜11時過ぎ
初めてアメリカで迎えた夏のシーズン。慣れない環境に適応し始めたころに、疲労は襲ってくる。試合終了が午後11時を過ぎるなど、遅い時間の試合が増えると、球団で準備された食事券さえ使うのも面倒になり、球場の出店の売れ残りのハンバーガーやピザが出るクラブハウスで食事を済ませるようになった。そんな中でも、徐々に試合へ臨むリズムを掴み、自分の時間を使えるようになってきていた。
朝は、掃除や洗濯のお世話をしてくれる「クラビー」と同じくらいの時間にクラブハウスに入り、グローブやスパイクを無心で磨く。各選手がクラブハウスに到着するころにはグラウンドへ出て、小石やゴミを拾う。チーム練習を終えると、私と数人の選手は試合前にシャワーを浴びながらその日の目標を語らい、その後試合に臨む--そんな行動が、日課になっていた。また、試合では、入場の際に球場のどの入り口でも一礼する日本人の姿が話題となり、「TOMA」というボードを掲げ、試合の応援に来て下さる方々もいた。
汗だくの男同士が衝突!?
そのころ、私はショートを守るA.P(ニックネーム)と二遊間コンビを組むことが多く、彼と行動を共にすることが多くなっていた。ある日の練習、日焼けがしたい私とA.Pは、上半身裸で自主練習をしていた。太陽の日差しが眩しく光る球場で、コーチが打ち上げる高いフライを何個捕球できるか競い合っていたのだ。 その最後の一球をかけたフライが、セカンドベース後方へ上がった。どちらも球をキャッチしようと譲らず、汗だくの上半身裸の男が接触!…と思いきや、心優しいA.Pが衝突を避け、ハグをするかたちになった。チーム練習直前であったため、監督含め全選手がその光景を見ており、大爆笑を巻き起こしていた。