<高校野球>班編成、全員で部運営 熊本・熊本西 センバツ21世紀枠候補
3月23日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が今月25日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難条件克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。 【写真で振り返る歴代出場校】 ◇熊本地震で避難経験の部員も 九州地区候補校・熊本西の選手たちが、横手文彦監督(42)のスマートフォンで気象庁のアプリを見ながら話し合う。「この日は雨が降りそう。屋内トレーニングにしよう」。日程表の前で「天気掌握班」が「トレーニング推進班」に声を掛けた。 熊本西では部内に「部室管理班」や「活気向上班」など11班が編成され、44人全員で部を運営する。学校のグラウンドは他部と共用のため約80メートル四方しか使えない日が多く、照明設備もない。恵まれない環境なのに、部長を経て2016年8月に就任した横手監督は当時、選手たちの練習がどこか「人任せ」のように感じられた。部員に主体性を持たせようと班編成を導入したところ、今では選手自ら動くようになった。 32枚の防球ネットの補修は「ネット管理班」が担っていたが、追いつかないため、班が提案して各部員に担当ネットを割り振った。「天気掌握班」の浜口智紀(2年)は班編成により「野球でも周りが見えるようになった」と明かす。「時間管理班」の3番・エースの霜上幸太郎主将(同)は「プレーにすきがなくなった」と胸を張る。「気付く力が高まり、粘り、逆転、集中打につながった」と横手監督。チームは昨秋の熊本大会準決勝の熊本工戦で二回に4得点して逆転し、6―5で粘り勝って九州大会初進出を決めた。 選手たちは中学時代の16年4月に熊本地震に遭い、大半が避難生活を送り、生活用水の運搬などを経験した。「野球普及・地域活性化班」を中心に地域清掃活動をしているが、横手監督はその積極的な姿勢に「奉仕の心がある」と感じている。 現在、練習はバックネット裏の花に手を合わせてから始まる。昨年11月、2年生選手が練習試合で頭部付近に死球を受けて亡くなった。チームは動揺し、カウンセリングを受ける選手もいた。ミーティングを重ねて「21世紀枠候補校として覚悟を持って前進していこう」と確認し合った。横手監督は「亡くなった仲間を含めて45人で臨む」とチームの思いを代弁し、吉報を待っている。【吉見裕都】