サケ激減「青森県産消える」/奥入瀬川 2カ月でわずか200匹弱/続く不漁、細る採卵 危機感
青森県内最大のサケの遡上(そじょう)河川・奥入瀬川で、漁期が始まった9月から10月末までの2カ月間の漁獲数が200匹弱にとどまっていることが分かった。ここ数年、不漁が続いており、6年前まで年間6万~8万匹ほど取れていたことに比べると近年は激減状態だ。取れるサケが少ないと採卵・ふ化・放流のサイクルがうまく機能しなくなり、数年後の漁獲数に影響する。奥入瀬川鮭鱒(さけます)増殖漁協の戸来敏幸組合長は「全く取れない。このままでは本県産のサケがなくなってしまう」と危機感を募らせる。 1日朝、同漁協の男性組合員2人が、おいらせ町内に設置しているサケ捕獲用の水車で作業をしていた。この日、いけすの中にいたのは雌1匹。本格的な漁期に入っているが、川に魚影は見られなかった。 箕輪展忠(のぶただ)さん(68)は「貴重な魚だ。取れないといっても(毎日の作業を)やめるわけにはいかない」と話した。 同漁協の2023年度の漁獲数は9、10月で49匹。年間でも151匹で、記録を確認できる1945年以降、最も少なかった。本年度はこの2カ月で計192匹が取れた。ここ10年で見ると、2018年度までは毎年度6万~8万匹ほど取れていたが、19年度に約1万7千匹に急減して以降、漁獲数が回復する気配はない。 近年のサケの不漁は全国的な傾向で、潮の流れの変化や、それによってもたらされる海水温の上昇が根本的な原因と考えられている。県水産振興課の種市正之課長は「(本年度の漁も)厳しい見込み。放流事業を支援しながら、今後は養殖への切り替えも選択肢になってくるだろう」と話す。 サケは4~5年で生まれた川に帰って来るが「回帰率」は放流数に対し1%程度。同漁協は、サケが稚魚の間に外敵に襲われるなどして死んでしまう確率を下げようと、放流前に与える餌に栄養剤を混ぜ、体を丈夫にして生存率を高める取り組みをしている。 漁獲数が少ないと採卵できる数も限られる。県内の関係団体は2年前から卵を北海道から購入している。ただ北海道も漁獲数は減少傾向にあり、本年度も希望する量の卵を譲ってもらえるかは分からないという。 戸来組合長は「一番困っているのは漁師だ。11月が(漁の)最盛期なので、なんとか取れてくれれば」と祈るように言った。