ピレリ、ハミルトンのタイヤ批判に反論「細かな違いが僅差の戦いで重要になってきているだけ」
メルセデスのルイス・ハミルトンはF1マイアミGP後、今のF1タイヤはこれまでで最も機能するウインドウ(作動温度領域)が狭いタイヤだと批判した。 【動画】オープニングラップに衝撃の大クラッシュ発生! ペレスのマシンは見るも無惨な姿に|F1モナコGP 「僕たちは、タイヤ温度に関して、極小のウインドウの中で仕事をしていると思う」 そう彼は語った。 「このタイヤのせいだと思う。間違いなく、僕のキャリアの中でこれほど小さなウインドウで仕事をした覚えはない」 「正直なところ、最もフラストレーションが溜まることだよ。前はもっと作動ウインドウが広かった。そうすればバランスを最適化することができるし、一周を通してグリップを高く保つことができる。これは間違いなく僕が1番嫌いなモノだ」 しかしピレリの考えはハミルトンとは違う。タイヤの特性が異なっているわけではなく、F1がより接近戦となったことが原因で、タイヤのピークパフォーマンスが重要視されるようになったからだとピレリは主張している。 かつてのようにコンマ数秒のラップタイム差があった時代には、タイヤがウインドウにわずかに入ったり入らなかったりすることは、パフォーマンスにとってそれほど重要ではなかった。 ピレリのF1チーフエンジニアであるシモーネ・ベッラは、ハミルトンの見解について次のように語った。 「どのタイヤにもピークはある。グリップの低下を一定のパーセンテージで捉えて、ウィンドウを定義しているんだ」 「昔も同じだったと思う。でもおそらく、それほど重要ではなかったんだ。というのも今は、ディティールのレベルが非常に重要になっているんだ」 「今はすべて強調され、重要になっている。過去、15~20年前はクルマやドライバーがコンマ0.5秒やコンマ7秒の差で戦っていた」 「しかし、今の戦いはまったく違っていて、コンマ1秒でも大きな違いがある」 ベッラはまた、タイヤのピーキーさはクルマによって違うし、コンパウンドによっても違うと考えている。 「特にC4コンパウンドのタイヤや、特に高温でのC5がピーキーなパフォーマンスを発揮することがあることがあるのはみんな良く分かっている」 「チームによっては、他のチームと比べてパフォーマンスのピークを引き出せないこともある。その原因のひとつはタイヤだ」 「だがクルマやサスペンション、クルマがコンパウンドのパフォーマンスをどう引き出しているかというのも要素になる。だから両方の要素があるんだ」 ピレリは最近、タイヤのワーキングレンジをピークグリップと比べて3%以内のグリップを発揮する温度領域だと定義していると説明している。 この領域をキープし、いかにピークに近づけるかが今のF1では重要となっているのだ。 では実際にピレリのタイヤのグリップと温度の関係はどのようになっているのだろうか。 ピレリのF1責任者であるマリオ・イゾラは、予選でのタイヤの挙動について、グラフを使って次のように説明する。 「グラフを見てもらうと、縦がタイヤのグリップ、横が温度になっている」 「気温が低いと、モータースポーツ用に開発されたコンパウンドのグリップは低い。その代わり、温度が上がるにつれてグリップは増す」 「ピークに達するまでグリップは上昇するが、それを超えるとオーバーヒートによってグリップが著しく低下する」 グリップのピークがどこにあるのかを知ることで、チームはタイヤが使える”範囲”を把握することができる。 「曲線のピークがグリップのピークを示している。通常、そこから3%以内を我々はワーキングレンジと定義している」 「我々はその2点間(ワーキングレンジ内)のグリップをできるだけ一定に、そして可能な限りレンジが広くなるようにしている」 「我々の目標は、ドライバーにできるだけレンジが広く(グリップ曲線が)平らなタイヤを提供し、より大きなオペレーションウィンドウを確保することだ」
Jonathan Noble